「Aをしたら、Bが発生した」という一連の出来事を目撃したとき、人は「Aをしたから、Bが発生した」と解釈します。しかし、AとBとの間に因果関係はないということも少なくありません。
1990年、アメリカで障害アメリカ法が制定されました。これ以降、アメリカで設置されたエレベーターには、障害者への配慮から、閉ボタンを押してもドアが閉まらないものが多くなりました。閉ボタンは作業や緊急対応のために付いていて、専用の鍵がなければ押しても意味はないのです。それでも、閉ボタンを押す人はいます。押しても押さなくても、ドアは決まったタイミングで閉まります。しかし、閉ボタンを押した人は、「自分がボタンを押したからドアが閉まった」と解釈し、満足します。
ニューヨークでは、歩行者がボタンを押すと信号が変わる「押しボタン式信号」はとうに廃止されています。しかし、押しボタンを撤去するのにも費用がかかるので、そのまま放置されているものも少なくありません。そういった信号機では、ボタンを押しても信号を変える効果はありません。押しても押さなくても、決まったタイミングで信号が変わります。それでも、信号を押した人は「自分がボタンを押したから信号が変わった」と解釈し、満足します。
ふたつの事例において、ボタンを押す人は無関係なふたつの事象に因果関係があると誤解し、その結果満足を得ています。意味がないからといって、ボタンを撤去したり、一般利用者には触れないところに隠してしまうと、「不便になった」と不満をもつでしょう。これは偽の薬を飲んで症状が改善する「プラシーボ効果」の一種であるといえます。
2010年頃、パワーバランスというブレスレットが流行しました。これを装着すると、身体能力やバランス感覚が向上すると言われていました。そこで、パワーバランスの効能を調べるための実験がおこなわれました。
被験者は目隠しをして、パワーバランスとダミーのブレスレットをつけて運動をしました。そこでバランス感覚や身体能力を調べたのですが、ふたつの間に有意な差は見られませんでした。
「これを付けるだけで身体能力アップ」とか「これを首から下げると金運がアップ」といったグッズは、定期的に流行します。そのほとんどは、実際の効果はありません。しかし、プラシーボ効果で「今自分は身体能力が上がっている」と思いこみ、その結果として高いパフォーマンスを発揮できるのであれば、そのグッズは詐欺とはいえないのかもしれません。