未来予測の精度を上げるには

2013年に、アメリカ企業の最高財務責任者(CFO)に翌年の株価指数のリターンを予測してもらうという調査が行われました。CFOはリターンの最大値と最小値を見積もりました。最大値に関しては、予測を上回る確率は10%、最小値に関しては、予測を下回る確率は10%という前提です。

つまり、実際のリターンが、CFOの予測した最大値と最小値の範囲内に収まる確率は80%という見積もりです。フタを開けてみると、予測範囲に収まったものは36%に過ぎませんでした。CFOは皆、予測の精度について自信過剰だったようです。

環境問題の専門家に、大気汚染防止法がもたらす経済的メリットを年間ベースで予測してもらったところ、30億ドルから90億ドルまでばらつきがありました。よくテレビなどで「〇〇が優勝したときの経済効果は〇〇億円」といった数字が出てくることがありますが、さほど信憑性は高くないでしょう。予測のベースとなる変数の取り方や、変数にかかる係数の設定によって数字は大きく上下します。

2011年に、複数の行動経済学者によって「優れた判断力プロジェクト」という企画が経ちあげられました。プロジェクトの目的は、高い精度で予測できる人間はなぜそれが可能なのか、予測の精度を向上させるにはどうすればいいか、といったことを調査することです。

プロジェクトの参加者は「来年、EUを離脱する国はあるでしょうか」といった、国際情勢に関する質問を中心に数百問の質問に回答しました。大半の参加者は、よい成績を修めることができませんでした。しかし、卓越した予測精度を叩き出した参加者が数%だけ存在しました。彼らについて、ある政府幹部は「機密情報を扱う情報機関のアナリストの平均よりも優れている」と評価しました。彼ら「超予測能力者」は、他の人たちと何が違うのでしょうか。

まず、超予測能力者の知能は、プロジェクト参加者の平均を上回っています。そもそも参加者の平均が一般平均を上回っていますから、超予測能力者の知能はかなり高いといえます。知能が高いことは必要条件ではありますが、十分条件ではありません。極めて高い知能を持っているにもかかわらず、予測精度が低い参加者はたくさんいました。

一般人は問題を細かい要素に分類せず、漠然と問題全体について考えて結論を出します。一方で、超予測能力者は「〇〇の地域で紛争が発生するか」といった問いに取り組む際は、まず問題を細かく分類します。地域の政情、経済状況、政府首脳などキーマンの情報など、関連情報をひとつひとつ精査するのです。そのようにして精査された要素を統合して、総合的に結論を出します。

一般人はその問題だけを見て、未来を予測します。一方で、超予測能力者は類似例を参照します。前段の問いであれば、その地域でのこれまでの紛争の歴史を調べます。また、状況が似ている他の地域での状況も確認します。「今まではこうだったから、また、他ではこうだったから、今回はこのようになる可能性が高い」というロジックで予測を組み立てるのです。

一般人は一度仮説を立てたら、仮説に反する情報や意見は排除します。仮説を強化する情報を積極的に集めて、仮説が間違っているかもしれないと疑うことはありません。超予測能力者は、自分の仮説に反するような情報も採用します。新しい情報を知って、必要と判断すれば躊躇なく仮説を修正します。

まとめると、将来を高い精度で予測するためには、知能が高いことは必須条件になります。それに加えて、要素を細かく分類して個別に精査すること、幅広く情報を取り入れ、偏見を持たないことが重要になるでしょう。

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