タメ口で話すか敬語で話すか

組織では、役職・年齢・その組織での経験年数等、様々な要因によって上下関係が決まります。ここでいう上下関係は、次のような定義です。

・下の者は上の者に敬語で話す
・下の者は上の者に敬意をもって接する
・上の者は下の者にタメ口で話してもよい(敬語で話すこともある)

会社組織の場合、上下関係について一番影響力が大きいのは役職でしょう。創業社長が引退して、社長の子どもが20代で新社長に就任するとします。新社長はそれまでは別の仕事をしていて、いきなり社長になりました。通常、その会社では20代の新社長が序列のトップになります。入社10年目の30代社員も、その会社で30年以上前社長に仕えてきた50代の副社長も、新社長に敬意を払い、敬語で話すでしょう。

ほとんどの社員が新卒採用で、中途入社が少ないような会社では、社歴が優先される傾向にあります。同じ年に新卒で入社した人たちは、お互いに「同期の仲間」という意識を持ちます。同期同士は、たとえ浪人や留年等で数年の年齢差があっても、お互い対等な関係でフランクに接します。留年等を経て24歳で今年新卒入社した社員は、去年入社した23歳の先輩には敬語で話すでしょう。

このように社歴優先の社風の会社では、「後輩の上司」「先輩の部下」といった関係ができるとギクシャクすることがあります。それを避けるため、標準と比べて極端に早い昇進というのは起こりにくい傾向があります。ただ、近年ではそうした慣習を破った抜擢人事も増えつつあります。

中途採用が多い会社では、役職・社歴・年齢にかかわらずお互い敬語で話す場合が多いと思います。幅広い社歴・年齢の社員が、組織の階層の上から下まで散らばっているため「全員に敬語で話しておけば間違いない」という考えになるのでしょう。

芸人の世界の序列は、芸歴によって決まります。大卒で芸人になった4年目26歳の芸人は、高卒で芸人になった5年目23歳の芸人に敬語で接します。年下の先輩芸人は、年上の後輩芸人に対してタメ口で話すのが普通です。先輩芸人は全然売れていなくて、後輩芸人はテレビに出まくっている売れっ子だったとしてもこの関係は変わりません。

芸人の世界は、会社のように明確な役職があるわけではありません。どれだけ売れているかを明確にランク付けできないので、はっきりわかる指標として芸歴がを序列の基準としているのでしょう。

この芸歴優先の序列は、落語などの伝統芸能や吉本興業の芸人の世界では絶対的なもののようです。しかし、一部の東京芸人の世界では「その辺、厳密にしないでもいいじゃん」ということで、年齢や芸歴の近いもの同士はみんな対等という関係で進めることもあるらしいです。

プロ野球の世界では、年齢が基準になります。実績やプロ歴に関係なく、年下の選手は年上の選手に敬語を使います。高卒でプロ入りして4年目の21歳、入団後すぐに活躍して若くしてチームの顔になった選手がいたとします。そのチームに大卒でプロ入りした22歳の新人が入団しました。この場合、21歳のスター選手は22歳の新人に敬語で接します。

日本の学校では、下級生は上級生に敬語を使います。小学生くらいだったら学年関係なくお互いタメ口かもしれませんが、高校生くらいになると、だいたい上級生には敬語を使うということが多いでしょう。

特に伝統的な野球部は、「上級生>下級生」というのが絶対的な価値観になっていることが多く、「1年奴隷、2年平民、3年神様」などと言われている野球部もありました。そういった環境で育まれた価値観は、大人になってもそう簡単には覆りません。

仮にプロ野球界の上下関係がプロ歴で決まることになったら、どうなるでしょうか。高卒でプロ入りした選手と、大学や社会人を経てプロ入りした選手の間で、年齢とプロ歴の逆転現象が起こってしまいます。

大卒で入団した22歳の選手と、高卒で入団した21歳の選手が同じ高校で先輩・後輩の関係だったとします。もしプロ歴で上下関係が決まるとしたら、22歳の大卒選手は、21歳の高卒選手に敬語で話すことになります。しかし、高校時代は22歳の大卒選手の方が先輩として、上の立場になったのです。大卒選手は今更高卒選手に敬語を使いにくいでしょうし、高卒選手も困ってしまうでしょう。そういった弊害を避けるため、プロ野球の上下関係は年齢が基準になっています。

日本で新しい組織に入る場合、こうした上下関係のルールをつかんでおいた方がいいでしょう。一般とは異なる基準で上下関係が決まる組織で、基準を読み間違えるとその後の人間関係に苦労することになります。

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