経営者に高額報酬は必要なのか

デロイトトーマツ グループは、日本国内で実施した2021年度役員報酬サーベイの結果と、2022年5月時点における米国・英国・ドイツ・フランス企業の開示情報により、計5か国の社長・CEO報酬の実態調査を実施し、その結果をネットで公開しています。

日本の社長・CEOの年間報酬中央値は、1.3億円でした。一方で、アメリカは17.9億円という金額でトップした。以下、ドイツ(7.0億円)、フランス(6.3億円)、イギリス(5.5億円)と続きます。

報酬構成を国別にみると、日本においては固定報酬が約5割でした。一方で、独仏英では約3割、アメリカでは約1割にとどまり、会社の業績などに連動する変動報酬の割合が大きくなっています。

アメリカの報酬額が突出して多い結果となりました。アメリカの場合、大企業は常に企業価値と株価を上げ続けなければならないプレッシャーにさらされています。そのような状況なので、実績のある経営者や高いパフォーマンスを期待される経営者は、奪い合いになります。

優秀な経営者は、かなり強気で報酬交渉に臨めるのです。「これだけの報酬が出せないのであればよそに行きますよ」と言えるんですね。その代わり、短期で結果を求められます。「今年は振るわなかったが、長い目で見て」なんて悠長な話は聞き入れられず、クビになるリスクもあります。

日本でも、経営者にアメリカ並みの高額報酬を与えるべきなのでしょうか。これに関して、行動経済学者のダン・アリエリーは興味深い実験をおこないました。実験では、被験者を複数のグループに分けて単純な機械的作業と、頭脳を使う作業をやってもらいます。この実験を通じて、報酬の多寡によって、作業の成績が変わるかどうかを調べました。

単純作業の課題は、キーボード上のキーを素早く連打するというものです。頭脳を使う課題には、計算問題を用いました。被験者には、お小遣い程度の少額ボーナスと、日本円にして7~8万円に相当する高額ボーナスという2種類の報酬を提示しました。被験者である学生にとって、後者の報酬はかなりの大金に思えることでしょう。

実験の結果、単純作業の場合はボーナスが高いほど成績が高くなりました。一方で、ある程度頭脳を使う作業の場合は、ボーナスが高くなると成績が落ち込みました。頭を使う作業では、「高額ボーナスをゲットしよう」という邪念が、思考に悪影響を与えてしまうのかもしれません。

企業経営の仕事は、単純作業ではなく頭を使う作業の方に近いでしょう。アリエリーは、「企業買収や合併について考えをめぐらせたり、手のこんだ金融商品を編み出したりする仕事に、ボーナスという形のインセンティブを与えるのは、わたしたちが思っているよりずっと効果が薄いかもしれないのだ。それどころか、とてつもなく高額のボーナスは、悪影響さえ与えかねない」と述べています。

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