「ご理解とご協力のほどお願いいたします」という表現をよく見聞きします。「店内ではマスクを着用していただきますようご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします」といったように使います。「ここまでへりくだらないといけないのか。『[店内ではマスクを着用してください』ではだめなのか」という思いもあるのですが、ここではその話は置いておきましょう。今回は、「ご理解とご協力」について掘り下げて考えてみます。
まず「理解」とは「物事がわかること」といった意味です。ただし、「ご理解とご協力・・・」というフレーズにおいては、それだけではなく「納得したうえでいちゃもんをつけてこないこと」という意味も含まれます。
例えば「人身事故の影響により、この電車は当駅でしばらく停車いたします。ご理解のほどよろしくお願いいたします」というアナウンスがあったとします。この場合、しばらく停車するということがわかっているだけではなく「『事故なんて関係ない!早く電車を動かせ!』とかいって騒ぎ立てないで、おとなしく待っててね」という気持ちが込められています。
「協力」は「目的に向かって力を合わせて努力すること。力を合わせて事にあたること」という意味です。「工事中につき、迂回路をご利用ください。皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力のほどお願いいたします」という掲示があったとします。この場合の「協力」というのは、迂回路を利用することを意味します。
とある駅のトイレに「トイレ内禁煙です。ご協力お願いいたします」という張り紙がありました。駅構内全面禁煙というのはもはや常識です。当然、トイレの中も禁煙というのはほぼ全員把握しているでしょう。それでも、このように下から目線で協力をお願いする形のメッセージにしないといけないのか、となんともいえない気持ちになりました。
「協力」の内容がはっきりしない場合もあります。近所のコンビニで「当店は〇月〇日から〇月〇日まで、改装工事のため閉店いたします。ご理解とご協力のほどお願いいたします」という掲示がありました。
この場合、「理解」というのは「改装工事期間は店を閉めるけど納得してね。『店を閉めるな!』とか文句言わないでね」という意味だと解釈できます。では、「協力」とは何を意味しているのでしょうか。この店が工事期間中閉店するにあたって、一般客が協力できることとは具体的に何なんでしょうか。
おそらく工事を手伝うといったことではないでしょう。ヘルメットをもって「協力しに来ました」と店に行っても現場の人を困惑させるだけです。もしかすると「閉店期間中によその系列店には行かずに、うちの系列のコンビニを利用してね」という意味なのかもしれません。だとするとあまりに図々しい協力依頼です。
「ご理解とご協力」というフレーズは、あたかも切り離せないセットのように使われています。しかし、何も考えずに使っていると近所のコンビニの掲示みたいに、何を協力すればいいのかよくわからないといった事態に陥ってしまいます。とはいえ、そこまで考えている私のような人間はごく少数なので、気にせず使っても差し支えないでしょう。