偏見と確率の話

以下の文章を読んでみてください。

吉田さんは大学時代に優秀な成績を収めました。非常に几帳面な性格で何事もきちんとしていなければ気が済みません。人付き合いは苦手ですが、自分の好きなジャンル(アニメ・鉄道・SFなど)の話になると饒舌になります。

この文章は、30人のエンジニアと70人の弁護士を面接した後で得られた人物描写です。吉田さんはエンジニアと弁護士、どちらである確率が高いでしょうか。

この質問に対して、多くの人が「吉田さんはエンジニアである確率が高い」と考えます。このとき、面接した人の7割が弁護士であるという事実は無視されています。吉田さんの描写は、一般的に考えられるエンジニア像に近いものです。直感的に「この人はエンジニアっぽいな」と考えたとき、人は確率を無視してしまうようです。

今度は純粋に数学的な確率の問題です。

ある都市では、タクシーは緑か青の2種類しかない。緑のタクシーの台数は8割、青のタクシーは2割で、それぞれ偏りなく市内を走っている。この都市でタクシーのひき逃げ事件が発生した。目撃者は「タクシーの色は青だった」と証言している。証言の信頼性を確認するため、目撃者に緑と青のタクシーがランダムに走っている映像を見せて色を答えさせるテストをしてみたところ、目撃者は7割の確率で正しい色を答えられて、3割は間違えることがわかった。目撃者の証言通り、ひき逃げしたタクシーの色が青である確率はどれくらいだろうか。

目撃者が7割の確率で正しい色を当てられるという情報を見て、タクシーの色が青である確率は7割だろうと考えてしまいそうですが、それは最初の情報を無視しています。そもそも緑のタクシーの台数が8割あるので、それを考慮に入れる必要があります。

以下のように考えてみましょう。

・目撃者がタクシーの色を青であると答えたとき
 (1)「実際のタクシーの色は緑で、目撃者はタクシーの色が青であると間違って答えた」
 (2)「実際にタクシーの色は青で、目撃者はタクシーの色が青であると正解した」
 という2つのパターンが考えられる
・タクシー100台がある場所を通過するとき、80台は緑、20台は青と考えられる
・目撃者が80台の緑のタクシーを見てそれぞれの色を答えたとき
 目撃者は7割の確率で正解できるので80×0.7=56台は緑と答えて
 24台は青であると間違った回答をする⇒(1)
・目撃者が20台の青のタクシーを見てそれぞれの色を答えたとき
 目撃者は7割の確率で正解できるので20×0.7=14台は青と答えて⇒(2)
 6台は緑であると間違った回答をする
・つまり、(1)が起きる確率と(2)が起きる確率の比は24:14である
・目撃者の証言通りタクシーの色が青であった確率は
 14÷(24+14)=約37%である

ということで、4割にも満たないのです。

ここまで見てきたように、人は偏見などによって簡単に数学的なものの見方を失ってしまいます。「この職業の人はだいたいこういう性格だろう」とか「あの人がそう言ってるということはそうなんだろう」などと安易に結論付けてしまう前に、落ち着いて考え直した方がいいときもあるのです。

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