「作り手の”こだわり”を感じる」という表現は、肯定的に評価していると思いますか。それとも否定的に受け止めていると思いますか。毎日新聞の調査によると、「肯定的」と捉える人が70.8%、「否定的」と捉える人が8.7%、「肯定否定が相半ば」と捉える人が20.5%という結果でした。
かつて、「こだわり」ということばは、「ちょっとしたことに捉われる」という否定的な意味で使われていました。「拘泥」と同じような意味ですね。しかし現在では、肯定的な意味と捉える人も多くなっています。
デジタル大辞泉で「こだわる」の意味を調べてみました。
1 ちょっとしたことを必要以上に気にする。気持ちがとらわれる。拘泥(こうでい)する。「些細(ささい)なミスに—・る」「形式に—・る」
2 物事に妥協せず、とことん追求する。「素材に—・った逸品」
3、4もありましたが割愛します。1の「ちょっとしたことを必要以上に気にする」というのは、否定的なニュアンスです。例えば、会議をしていて資料の内容ではなく、細かな言い回しや誤字についてしつこく追及したら、「何をそんなことにこだわってるんですか…」と思われるでしょう。
2の「物事に妥協せず、とことん追求する」というのは肯定的なニュアンスです。広告を見ていると、「こだわり」ということばを何度も見かけます。
・お好み焼き屋「こだわり抜いた創作料理100種類」
・ラーメン屋「こだわりのスープ」「こだわりの自家製麺」「こだわりのチャーハン」
・魚市場の食堂「職人こだわりの天ぷら」
これらは、ネット検索して見つかった実際の広告です。広告にある「こだわり」は、「店側が妥協せずに品質を高めました!」というPRの意味で使われています。
「よくばり」というのは、元々否定的な意味のことばでした。辞書には「欲深くものをほしがるさま、またそのような性格の人」といった説明が書かれています。「あの人はよくばりだ」と言うとき、話者は「あの人」に対して、否定的な見方をしていると考えられます。
最近、一部の店で「よくばりセット」というメニューを見ることがあります。コンビニ大手のローソンでは、10月21日から「よくばりセットメシ」という商品を発売しています。「醤油ラーメン&チャーハン」「ボンゴレ&トマト」「ミートソース&マカロニグラタン」といった、複数のメニューを一度に楽しめるものです。ローソン以外にも、お得な詰め合わせパッケージを「よくばりセット」と命名している店は多くあります。
ここで「よくばり」というのは顧客のことを指しています。「客に対してよくばりとは失礼だろ!」という意見が出てきてもおかしくないでしょう。なぜ店はこんなネーミングにしたのでしょうか。
しかしここで、「じゃあ『よくばりセット』以外に適切なネーミングは?」と聞かれると、答えに窮してしまいます。「デラックスセット」「ゴージャスセット」「贅沢セット」…ちょっと「高そう」というイメージが先行してしまう恐れがあります。「満足セット」「満腹セット」…これだと「高カロリー」「不健康」「太りそう」といった印象を与え、敬遠されるかもしれません。
そう考えると、「よくばり」というのはちょうどいいところなのかもしれません。