人間同士の会話では、ほとんどの場合話をしているのはひとりだけです。ふたり異常が同時に話をするケースもありますが、まれです。会話において、ある人の話が終わって次の人が話を始めるまでにどれくらいの間が生じると思いますか。
ある調査によると、会話で話者の交代に要する時間は、おおむね0.2秒程度ということでした。この結果は、人は会話しているとき、自分の番が来たらすぐに話始められるように準備をしていることを示唆しています。
被験者に画像を見せて、それが何の画像が答えてもらうという実験がおこなわれました。例えば、被験者が犬の画像を見せられたとします。その後、被験者が「これは犬です」と答えるまでの間に、様々なことが起こります。
①脳内から「犬」という概念を抽出する
②抽出した概念を表す「犬」という言葉を認識する
③「犬」という単語の発音を認識して、実際に発生する
これらのプロセスを経て、被験者は「話をしよう」と意図してから実際に言葉が出るまでに約0.6秒を要します。
実際の会話では、ほとんどの場合、相手が話し終わってから約0.2秒で次の人が話を始めています。相手の話が終わるタイミングを、早めに察知していなければこれほど早く話を始めることはできないでしょう。
それでは、人は相手の話が終わることをどうやって察知しているのでしょうか。これに関しても様々な研究があります。声の高さ、抑揚、表情、しぐさなどが関係していると考えられます。とはいえ、単独で話の終わりを見極められるような要素はないと考えるのが妥当なようです。
複数の国で、YES/NOで応えられる質問に対する、応答までの経過時間を調べるという研究がおこなわれました。その研究によると、最も応答に係る時間が短いのは日本語でした。質問から応答に要する時間はわずか0.007秒だったのです。最も応答が遅いデンマーク語では、0.468秒の時間がかかっていました。
この差の原因として、国民性の違いの他に、文法の違いということが考えられます。デンマーク語は英語と同じくSVO(主語-述語-目的語)の文型が使われています。一方、日本語はSOV(主語-目的語-述語)の文型です。
“I ate lunch.” という英文であれば、I(私は)という主語の次に、ate(食べた)という術語が来ています。そして最後にlunch(お昼ご飯)という目的語が来ます。日本語では、「私はお昼ご飯を食べた」というように、最後に術語が来ます。では、次に以下の2つの英語の疑問文をみてみましょう。
① Are you a student?
② Are you a student at Oxford University?
②の疑問文は、途中までは①の疑問文と同じです。そして、最後の単語 “student”の後に” at Oxford University” という句がつなげられています。つまり、”Are you a student” まで聞いた瞬間は、それで質問はおしまいなのか、さらに何か続くのか、どちらの可能性もあるということです。
上記2つの英語の疑問文を、日本語に置き換えると以下のようになります。
①’あなたは学生ですか。
②’あなたはオックスフォード大学の学生ですか。
①’と②’のいずれも、疑問を表す助詞の「か」で終わっています。このように、日本語の疑問文は最後は「か」で終わるという原則があるため、「か」の音を聞いた瞬間に、「相手の質問が終わった」と判断できるのです。
このように、文の最後に何が来るかによって、「相手の話が終わった」と判断する難易度が変わってくると考えられます。