最近、たまたま1年前のニュースがYouTubeで流れてきました。年金支払いミスにより、突然600万円もの請求が来たという話です。
大阪府寝屋川市に住む佐々木さん(仮名)56歳。2023年に脳梗塞を発症して、その後左半身が麻痺しました。現在は杖が欠かせない生活です。週3回リハビリをしていますが、まだ働けない状況です。
収入が途絶えた佐々木さんは、85歳の母親の年金を頼りにせざるを得ませんでした。母親が1か月に受け取っている年金は月16万円で、余裕がある生活は送れません。そんな中、佐々木さんの母親宛てにある手紙が届きます。「これまで支給した年金に過払いがあったため、返還してほしい」というものでした。その金額は約618万円です。
佐々木さんの母親は、「びっくりしたわ。600万ってどういうこと?」と語ります。それはそうでしょう。一般市民がいきなり「600万円返してください」と言われたらひっくり返ります。
佐々木さんの母親は、20年あまり公立小学校で教師をしていました。今回、公立学校共済組合からの年金が過大に支給されていたというのです。母親には、公立学校共済組合から共済年金、日本年金機構から厚生年金が支給されていました。その後、夫が亡くなり日本年金機構から遺族年金も受け取れることになりました。それにともない、共済年金と厚生年金は半分になるという決まりでした。ところが、公立学校共済組合のミスにより、共済年金が全額支給されてしまったというのです。公立学校共済組合は、このミスに10年間気付かず、600万円以上を過大に支給してしまいました。
法律上は、過大に受け取っていた600万円は不当利得に当たり、返還の義務があります。しかし、いきなり「600万円返して」と言われて対応できる世帯などそうはないでしょう。
一度に600万円余計に支払われたらさすがにほとんどの人が気付くでしょう。しかし、今回の場合は10年かけて600万円の過払いです。1年あたり60万円、1か月あたりにすると5万円です。しかも、「制度上本来5万円減額されるべきところがされていなかった」というミスですから、それに気付かなかったのを全部受給者側に被せるのは気の毒な話です。
番組では、電話で返還を請求する人の声も流れていました。「お母さまには落ち度はないのですが、法律上返していただく必要があります」という主旨のことを話していました。電話窓口の人はそう話すしかないでしょうね。この人を責めても仕方ありません。
ちなみに、年金の受給権の消滅時効は5年です。つまり、本来受け取れる年金が、支給側のミス等なんらかの事情で受け取れていなかったとしても、5年経過すると受給権がなくなってしまうということです。ところが、法律上支払い過ぎた年金は、10年前から遡って返還義務があるのです。法律的にはそうなっているのですが、なんだか理不尽な気もします。
佐々木さんが電話で共済組合に「母は今年85歳なんですが、返済が終わらない場合は僕らに回ってくるんですか」と尋ねると、組合の担当者は「返済が終わらない場合は残額をご遺族にお願いする形になります」と回答します。これもなかなか理不尽ではないでしょうか。
この動画のコメントで、有益なものを発見しました。コメント主は元公務員とのことです。コメント主によると、「分割返済すると回答して、月数千円でも返せばよい。仮に60万円しか返済できなければ、残り540万円は踏み倒す。人事で職員も変わっていき、請求にも来なくなる」とのことでした。これはなかなか実用的な回答ですね。
公務員は法律に従って動くしかありません。返還請求をしてくる職員に「こんなのおかしいじゃないか!」と言っても、職員は「そうですよね。じゃあ免除します」とは言えないわけです。ただ、「一括返済ではなく分割返済で」といった譲歩は可能です。そこで少額でも返し続ければ、「返済の意思はある」と見なされるということです。
母親が亡くなったら、遺族となる佐々木さんに返済をお願いするというのも、心情的には理不尽に思えます。年金の受給権は本人だけにあって、本人が亡くなれば受給権は消滅します。しかし、過払い分の請求権は遺族が引き継ぐというのはなんだかモヤモヤします。私は完全な部外者なので、「モヤモヤする」という表現を使っていますが、当事者になったら死活問題ですよね。
金額は全然違いますが、実は私も似たような経験をしています。社会人2年目くらいのときに、ボーナスの計算を間違えて20万円ほど多く支給されたことがありました。それが発覚したのが、支給の約半年後。会社の管理部門から、「20万円多く支給してしまったので、次の給料から天引きでいいか」と言われました。
当時の私の月給は約30万円です。さらに社会人2年目で貯金もほとんどありません。30万円の給料から20万円引かれたら、生活が立ち行かなくなります。そのときは、交渉して数か月かけて分割で給料から天引きしてもらうことになりました。
こういうケースでは、過大支給した側のミスとして、ある程度返還額を減額できないものなんでしょうか。