オーケストラ指揮者のペーター・ハンケは、「団員が150人を超える大きなオーケストラでも指揮してきたが、あまりよい結果は得られなかった」と語ります。150人を超える規模のオーケストラだと、お互いの名前も知らない団員が出てきます。団員同士のコミュニケーションが希薄になってしまいます。
大人数のオーケストラでは、指揮者と団員の関係も弱まります。ペーターは、「100人以上のオーケストラで指揮するときは、とても孤独を感じる」と言っています。大規模な集団を率いるとき、リーダーは孤独感が先鋭化し、関係性の弱さをエネルギーやカリスマ性で補う必要があるそうです。
一方で、楽団の規模が小さくなると、ある時点で指揮者が不要になります。ペーターによると、リーダーがいなくても機能する演奏家の最大数は5人です。確かに、ほとんどのバンドは構成員が5名以内で収まっています。4~5人のグループでは、対立があると2対2、あるいは2対3に分かれることが多く、1人が孤立するというケースは少ないでしょう。5人を超えると、「みんなで決める」ということが難しくなります。皆を引っ張る存在が必要になってきます。
メンバーが15名くらいになると、正式なリーダーが必要になってきます。50人を超えると、サブグループが生まれます。金管楽器、木管楽器、弦楽器などの小集団ができます。そして150名を超えると、最初に書いたように指揮者が統率することが難しくなってきます。
1人の人が、人間らしい関係を維持できる人数は人数の上限を「ダンバー数」といいます。対面のネットワーク、電話のネットワーク、村落社会など、様々なコミュニティにおいて、ダンバー数はほぼ100人から200人の範囲に収まります。平均すると150人程度になります。
150人を超える集団になると、様々な問題が発生します。集団内での情報の流れが滞るようになります。また、複数の派閥や縄張りが発生して、意思決定に支障が生じます。こうなると、何らかの管理システムを使って集団を運営する必要があります。
ある研究によると、教会の会衆が150人を超えると、様々な問題が発生するようです。信徒の信仰心が冷めて、ひとりあたりの献金額が減ります。また、教会は自分たちの気持ちに応えてくれないと感じ始めます。牧師も信徒全員を把握することが難しいと感じるようになります。
物理学者のブルース・ウェストの研究によると、ネットワークの規模が150人に近付くにつれて、システム全体の情報の流れがよくなっていきます。しかし、150人を超えると、情報の流れが急激に鈍くなります。人々は、全員とコミュニケーションを取ることを諦め、限られた派閥内だけで話をするようになるのです。
もしあなたが何らかのコミュニティを運営していて、メンバーの数が150人を超えそうになったら要注意です。もし超えた場合は、1つ50人程度の小グループに分割し、それぞれにサブリーダーを割り当てるなど、何らかの対応をしないとコミュニティが崩壊するリスクがあるのです。