最近は人手不足や経費削減のために、小売店や飲食店でスタッフの数が少なくなっているようです。私が通っているジムでは、数年前まで受付には基本的に2人はいたのですが、最近は1人だけということが多くなってきました。これまでは、入店時に会員証をスタッフに渡して、スタッフが会員証のバーコードを読み込んでチェックイン手続きをしていました。現在では、会員が直接バーコードリーダーに会員証をかざす「セルフチェックイン」を導入している店舗が増えました。セルフチェックインにすることで、受付が1人で回せるようにしたのです。
たいていの場合、受付が1人でも十分なのですが、会員の問い合わせ対応やトラブル等が重なると、1人ではさばききれずに対応待ちの行列ができてしまいます。ジムとしては、そういったリスクよりも、1人体制にしたときのメリットの方が大きいと判断したというわけです。
少し前に、牛丼チェーンのすき家の「ワンオペ」が問題になりました。2022年、名古屋市内のすき家で、深夜から早朝にかけて1人で勤務していたアルバイトの女性が店内で倒れ、午前9時前に出勤した別のアルバイトの女性に発見され、病院に運ばれたが亡くなったという事件がありました。それを受けて、すき家は午前5時から9時の時間帯でワンオペを廃止すると発表しました。
1人で勤務していたときに、急病などで意識を失ってしまったら、通報できる人がいません。また、1人しかいない状態では、強盗等の危険な目に遭うリスクも上がります。店員が2人いるというだけで、そうした犯罪に対する抑止力にはなるでしょう。また、日常の業務においても、注文取り・調理・提供・会計・片付けをすべて1人でおこなうのは大変です。ちょっと来客が立て込んだらオペレーション崩壊です。
昨今の物価高で、シフトを削って人件費を減らさないとやっていけないという店もあるかもしれません。しかし、1人で回すのに無理があるのにワンオペにしないと利益が出ないというのであれば、そもそもそのような店は閉じた方がいいでしょう。
店としてはワンオペを解消したいと思っていても、なかなか人が集まらないという事情もあります。特に24時間営業店の場合、深夜・早朝の時間帯には応募が来ません。
人が集まらないならば、24時間営業をやめればいいのですが、フランチャイズ展開しているような店では、24時間営業をやめられない事情があります。多くのフランチャイズ店では、売上の一部を本部にロイヤリティとして納める契約になっています。利益ではなく、売上に対してロイヤリティが発生するというのがポイントです。
一般的な店舗において深夜・早朝の時間帯は、来客が少なく売上は低くなります。深夜・早朝の時間帯だけ切り取って計算すると、赤字になる店舗は多いでしょう。店舗単位でみると、深夜・早朝の時間帯は閉めた方が利益が増える場合もあります。ところが、利益ではなく売上の観点から見ると、営業時間は長ければ長いほどいいということになります。
ある24時間営業の店で、11時から23時の売上が100万円で経費は50万円、23時から翌11時までの売上が30万円で経費は50万円だとします。この店は1日の売上が130万円で、利益は30万円です。もし営業時間を11時から23時に変更すれば、売上は100万円に減りますが、利益は50万円に増えます。この店が、売上の5%をロイヤリティとして本部に納める契約だったとします。24時間営業であれば、本部には1日の売上130万円の5%、6万5千円がロイヤリティとして収益となります。もし営業時間を11時から23時に短縮すると、ロイヤリティは5万円に減ってしまいます。
最初のジム受付の例のように、人を減らすにあたってこれまで人がやっていたことを機械化する等の工夫をするのであれば、減らした後の問題も少なくなるでしょう。しかし、人は減らすが仕事の総量はこれまでと変わらないということであれば、必ずどこかにそのしわ寄せが来ます。企業としては、目先の利益にとらわれず、長い目で見て戦略を考えるべきでしょう。