YouTube動画のテンポがいい理由

1910年代、映画製作者のD・W・グリフィスが、コンティニュイティ編集と呼ばれる映像技術を開発しました。映画の登場人物Aが、カメラの望遠レンズで隣のビルを見ています。場面が切り替わり、ビルの部屋で仕事をしている別の人物Bが映ります。その後、Aが映っているカットとBが映っているカットが何度も切り替わります。我々はこの一連の映像を見て、「Aは望遠レンズで隣のビルにいるBを見ている」ということを理解します。そして、場面は切り替わりますが、時間の連続性は保たれていると解釈します。今では当たり前に使われている手法ですが、当時の映画界にとっては革新的な技術でした。

1950年代には、ジャンプカットと呼ばれる映像技術が用いられるようになりました。同じシーンにおいて、ある時間から別の時間にジャンプして、あえて時間の連続性を断ち切る手法です。ジャンプカットでは、ひとつのシーンで複数の部分が欠けているため、その空いている部分については観客が想像力で補う必要があります。

仕事から帰宅した男が、カップ麺にお湯と粉末スープを入れて、ふたをするというシーンがあるとします。時間の連続性を保つのであれば、これら一連の動作をカットなしで仕上げるでしょう。一方、ジャンプカットを用いると、一連の動作のところどころにカットが入り、その都度時間が飛びます。例えば、男がお湯を入れているところで、お湯を入れ終わる前にカットを入れて、カップ麺のふたをするカットに飛ぶといったように。

こうしたジャンプカットは、見るものにちょっとした驚きを与え、違和感を覚えさせることでしょう。製作者がこの手法を用いる理由としては、「あえて不自然さを出したい」「スタイリッシュな感じにしたい」「単に時間を短くしたい」といったことが考えられます。

YouTubeでもジャンプカットが用いられています。YouTubeの場合、その目的は「最短時間に最大限のコンテンツを詰め込みたい」「動画のテンポを良くしたい」といったことが挙げられます。日常会話、仕事の打ち合わせ、スピーチなどで人が発言するとき、通常は「えー」「あー」といったつなぎ言葉が入ります。また、話と話の間にある程度の沈黙が生じることもあるでしょう。YouTubeなどの動画コンテンツでは、そうした間が致命傷となります。1秒にも満たないつなぎ言葉や沈黙の時間があるだけで、視聴者は退屈して別の動画に行ってしまうのです。

YouTube動画で、特にひとりでずっと喋っているような動画を見ると、ジャンプカットが多用されています。一文と一文の間で、微妙に話し手の体勢が動いていることがわかります。ノーカットの映像では、この間につなぎ言葉やわずかな沈黙があったのでしょう。

このようなジャンプカットの使い方は、従来の映画やテレビの世界ではあまり見ることはありませんでした。登場人物が何か語っているシーンで、YouTubeで使われるようなジャンプカットが入っていたら興ざめでしょう。そもそもプロの役者であれば、不要なつなぎ言葉や不自然な沈黙を挟むことなく、与えられた台詞を話すことができます。もし途中で沈黙があったとすれば、それは演出上必要な沈黙であり、台詞の一部なのです。

テレビのトーク番組でも、YouTubeのようなジャンプカットは滅多に使われません。同じ人物が話している場面で、途中で時間を飛ばすような編集は、「素人っぽい」ということで嫌われます。つなぎ言葉や沈黙をカットする必要があるときは、別のカメラで撮った別の人物等のカットに切り替えるのが普通です。こうすることで、時間がつながっているような映像ができあがります。

YouTubeでは、視聴者をつなぎとめるためにジャンプカットを多用します。しかし、無駄をそぎ落とされた映像は、記憶に残りづらいという特徴があります。あなたがYouTubeでテンポのいい3分間程度の動画を立て続けに3本見たとします。見終わった後、その3本がそれぞれどういう内容だったか、他人に説明できるでしょうか?

コメントを残す