平均の罠とコントロール幻想

たいていの人は、自分は平均より上の人間だと思っています。また、自分が得意な分野や好きな分野においては、平均を大幅に上回っていると考えます。

心理学者のマイヤーズは、車を運転する人を対象に調査をおこないました。その結果、車を運転している95%の人が「自分は他の運転手よりも優秀だから、事故を起こすことはない」と考えていることがわかりました。

「9割以上の人が平均より上」という状態は、絶対にないとはいえませんが、かなり異常事態です。10人の集団がいて、「1人は0点、残りの9人は10点」という状態であれば、10点の9人は平均より上ということになります。しかし、一般的な集団でそのようなことはまず発生しません。

駅やショッピングセンターに行くと、大量の人々を見かけます。その光景を見てあなたは、「みんな同じに見える」と思うかもしれませんが、他の人たちも、あなたを含めた集団を見て同じことを思っているでしょう。「ほとんどの人は凡庸であるが、自分は違う」とほとんどの人が思いこんでいるのです。

心理学者のランガーは、南ニューイングランド電話会社の昼休み時間に、新製品のマーケティング調査に協力してほしいと社員に依頼しました。被験者は、奇妙な装置がある部屋に案内されました。その部屋には、てっぺんに3本の金属の帯がある木の箱がありました。被験者は金属のペンをもって、3本の帯のうちどれか1本に、端から端までペンを走らせます。そして、金属のペンが帯に触れたとき、3本のうち1本だけ音が鳴ると被験者は説明されます。どの帯が「当たり」なのかは、完全にランダムに決められ、それも被験者に説明されます。

この調査の進め方にはいくつかパターンがあります。どの帯にするかは被験者が選べるのですが、被験者自身がペンを帯に走らせるパターンと、調査スタッフがペンを持って帯に走らせるパターンに分かれます。また、説明後すぐに帯を選ぶパターンと、説明後数分間箱を触れる時間が与えられるパターンに分かれます。つまり、2×2の4パターンに分かれるわけです。ただし、箱を触っても、一切正解の帯のヒントは得られません。

音が鳴る帯を選べたかどうか、自信があると答えた被験者が多かったのは、事前に箱を触ることができて、なおかつ自分でペンを持ったパターンでした。事前に箱を触れず、なおかつ調査スタッフがペンを持ったパターンでは、被験者が自信がないと答えた割合が最も多くなりました。

ここで前提条件を思い出してみましょう。3本の帯のうち、どれが音がなる帯なのかは完全にランダムで決まります。そしてそのことは、被験者にも説明されています。それでも、ペンを自分で持つかどうか、箱に触れられるかどうかで自信の度合いが変わってしまうのです。まるで、「自分には成功率を高められる能力がある」と考えているかのようです。

このように、本来自分のコントロールが及ばない領域に対して、コントロール能力があると誤解してしまうことは誰にでもあります。結果が完全にランダムで決まる電子ルーレットがあって、「当たり」に止まったらあなたの人生が変わるくらいの大金を得られるとします。そのルーレットのストップボタンは、あなた自身で押したいと思いませんか?

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