AとBという2つの事象がほぼ同時に発生したとき、私たちは2つの間に因果関係を見出そうとします。「AがBを引き起こした」、あるいは「BがAを引き起こした」、あるいは「別の事象CがAとBを引き起こした」といった具合に。
ある日大きな地震が発生したとします。ちょうどその直前に、普段見ないような変わった形の雲を見たら、「あの雲は地震の前触れだ」と思うかもしれません。ある人がたまたま、普段と違うルートで職場に行ったら、その日とてもいいことがありました。すると、その人はそれ以降常にその日と同じルートを使うようになりました。では、その人はずっといいことがあり続けるのでしょうか。
心理学者のスキナーは、ラットやハトを使った実験をおこないました。ある仕掛けがされた箱に、ハトが放り込まれます。箱の中でハトは、うろうろしたり、適当に床や壁をつついたりして過ごします。あるとき、ハトが偶然にスイッチをつつくと、エサが出てきました。こうして「スイッチをつつくとエサが出てくる」ということを学習したハトは、頻繁にスイッチをつつくようになりました。
この実験の後、スキナーは一部条件を変えた実験をおこないました。飢えた鳥を箱に入れて、その行動に関係なくランダムなタイミングでエサが出るようにしました。しばらくすると、ある鳥は特定の場所でリズミカルに頭を振り続けるようになりました。別の鳥は、頭をグルグルと回転させるようになりました。
たまたまその鳥が、左側の壁をつついていたときにエサが出てきたとします。鳥の行動と、エサが出てきたという結果に因果関係はありません。しかし、鳥は自分の行動がきっかけで、エサが出てきたと学習してしまうのです。その結果、エサを求めて左側の壁を延々とつつくことになります。
エサが出るタイミングはランダムですから、左側の壁をつついてもしばらくエサが出てこないこともあります。しかし、つつき続けているといつかはタイミングが来てエサが出てきます。すると、鳥は「やっぱりここをつつくとエサが出てくる!」という思いがより強固になります。つついても、つつかなくてもエサは出てくるわけです。ところが、鳥はそれがわからない。
人間も同様です。最初に出てきた「通勤時にあるルートでいくと、その日いいことが起こる」と信じている人の話に戻りましょう。そのルートを通り続けても、ずっといい日ばかりというわけではないでしょう。普通の日もあるし、悪い日もあるはずです。もちろん、いい日も訪れます。そしていいことが起こった日に、「やっぱりこのルートで通勤するといいことが起きるんだ」という思いがより強くなるのです。