1分間黙ってから質問する

作家、哲学者のエルケ・ヴィスの著書『「質問」の哲学』で、1分考えて質問することの効用について書かれていました。著者は、参加者の経験を素材にした議論の演習をおこないました。

参加者はまず、最近悩んだり、イライラした経験について2センテンス以内で簡潔に書き出します。次に2人1組に分かれ、1人は自分の悩みやイライラした経験を読み上げます。もう1人はそれを聞き、1分間黙った後に1つだけ質問をします。質問の前に1分間黙るというところがポイントです。

人の話を聞いた後、1分間沈黙するという状況を想像してみてください。非常に気まずい体験になるでしょう。被験者の多くも、最初は居心地の悪い思いをしました。しかし、数秒もすると、皆集中しました。演習の最後に、参加者が感想を述べました。誰もが「1分後に尋ねた質問は、最初に頭に浮かんだ質問と大きく違っていた」と答えました。

他人の経験談を聞いた後ですぐに浮かぶ質問というのは、たいていの場合、相手をよく知るための質問ではありません。「こうすればよかったんじゃないの?」といった類の、質問の形をしたアドバイスになるケースが多いでしょう。自分が考えた答えに誘導するための質問ということもあるでしょう。

演習の参加者たちも、やはり最初はそういった質問が頭をよぎりました。しかし、1分間考えるだけでまったく違う質問を思いついたのです。1分なんて時間はあっと言う間に過ぎてしまいます。それでも、質問の中身を変えるには十分な時間だったようです。

とはいえ、これは演習だからできたことともいえます。実際の会話で、相手の話を聞いた後1分間も黙っているのは至難の業でしょう。沈黙が10秒程度続いた時点で、相手も「どうしたの?」と聞いてくるのではないでしょうか。

『「質問」の哲学』では、良質な質問を通して会話の質を高め、相手と自分自身の理解を深める方法を解説しています。この本を通じて、質の良い質問をする技術を身につければ、なるべく相手を待たせることなく、いい質問をすることができるようになるでしょう。

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