X、InstagramといったSNSでは、「いいね」ボタンというものが付いています。誰かの投稿を見て、「いいね」「面白いね」「素敵だね」といったポジティブな感情を抱いた閲覧者は、「いいね」ボタンを押します。人気ユーザーの投稿にはたくさんの「いいね」がつきます。それほど人気ではない人の投稿でも、注目を浴びるような投稿をすれば、たくさんの「いいね」がつきます。
今から10年ほど前に、Facebookは従来の「いいね」ボタンに加えて、新しいリアクションボタンを追加しました。追加されたのは「超いいね」「うけるね」「すごいね」「悲しいね」「ひどいね」の5種類です。
Facebookとしては、この変更によってより多様な感情の表現ができるようになると考えたのでしょう。例えば、「こんなひどいことがあった」という投稿であれば、従来の「いいね」ではなく、「悲しいね」や「ひどいね」を押すことを想定していたと考えられます。しかし、Facebookが新たに追加した5種類のボタンは、ほとんど見向きもされませんでした。結局、ユーザーたちは従来の「いいね」ボタンばかり使っていたのです。
Facebookが新しいボタンを追加していた頃、スナップチャットというSNSが大きく成長していました。スナップチャットには、「いいね」ボタンがないという特徴があります。スナップチャットのユーザーは、ストーリーを投稿したり、友人にスナップを送ったりすることができます。そして投稿した内容は、一定時間経過すると消えてしまいます。これがスナップチャットのもうひとつの特徴です。
投稿した文章や写真が、多くの人に見られ、たくさんの「いいね」が付くーそれは投稿者の自己顕示欲を満たし、投稿を継続するモチベーションになると考えられていました。しかし、スナップチャットには「いいね」ボタンが存在しません。そしてスナップチャットは若者を中心に、多くの人に使われています。
「いいね」というのは、SNSを続けるモチベーションになるのと同時に、プレッシャーにもなるのです。普段の投稿は100いいねくらいだったのに、ある日友人とナイトプールに行った写真を上げたら1000いいね付いたとします。これは嬉しい。翌日、カフェで食べたランチプレートを上げたところ、普段よりやや少ない80いいね程度でした。ここで焦りが生じます。「もっとキラキラした内容にしないと『いいね』が減ってしまう!」
ほとんどのSNSユーザーは、閲覧数やいいね数が増えても、それによって収入を得られるわけではありません。単に数字が増えるだけです。しかし、その数字に縛られて、自分が本当にアップしたい内容ではなく、より数字が取れそうな内容を上げるようになってしまいます。
その点、スナップチャットはいいねの数を気にする必要はありません。そもそもそんなボタンがないのですから。数字を気にすることなく、自分が上げたいもの、友人と共有したいものを投稿できます。