医師は誰でもできる仕事ではありません。大学の医学部に合格し、最低6年かけて卒業して、なおかつ医師国家試験に合格する必要があります。その代わり、全職業の平均年収よりもはるかに高い収入を得ることができます。また、医師は社会的なステータスや信用が高いものです。「自分の仕事が社会や人の役に立っている」という実感を得やすい職業でもあります。
ところが、アメリカの医療機関、メイヨークリニックの調査によると73%の医師が、自分の子どもには医療関連の仕事を勧めないと答えています。なぜそんなことになっているのでしょうか。
どんな仕事でも大変さはあります。医師の仕事は特に大変なようです。メイヨークリニックの調査によると、医師の52%が燃え尽き症候群を報告しています。また、PTSD(心的外傷ストレス障害)の発生率は15%に上り、これは一般労働者の約4倍です。さらに、医師の15%が薬物乱用を経験しています。医師の鬱と自殺の発生率はアメリカ全体の平均の2倍あります。
こうした医師を取り巻くリスクを取り除くため、メイヨークリニックはある研究をしていました。仕事への愛情を数値化する研究です。
この研究で、医師たちに勤務時間のうちどれくらい自分が好きなことに費やしているか質問しました。その結果、勤務時間の20%以上を好きな仕事に費やしている医師は、燃え尽き症候群のリスクが有意に低いということがわかりました。さらに、その割合が20%を割り込んだ場合、それに反比例して燃え尽き症候群のリスクが上昇していました。
医師に限らず、どんな仕事でも「自分が好きなことだけをやる」ということは難しいものです。コードを書くことが好きでプログラマになった人も、勤務時間中ずっとコードを描き続けられるというケースは少ないでしょう。プログラミングとは直接関係がない事務手続きや、自分が参加する意味が見いだせない会議にも時間を費やす必要があります。
「〇〇がやりたくてこの会社に入ったのに、それ以外の仕事が多すぎる」というのはよく聞く話です。それでも、勤務時間の20%だけ好きな仕事に打ち込むことができれば、仕事でメンタルをやられるリスクは大幅に減るのです。
その日あなたがやった仕事を箇条書きにしてみましょう。そして、それぞれの仕事について、「大好き」「大嫌い」「どちらでもない」、いずれかの評価をつけましょう。大好きな仕事に2割以上の時間を費やせているのであれば、ひとまず心の平穏は保てそうです。
大好きな仕事に費やす時間を増やすには2通りの方法があります。ひとつは、大好きではない仕事を、やらなくて済むようにする、あるいは他の人に任せるかして、浮いた時間に大好きな仕事を割り当てる方法です。もうひとつは、大好きではない仕事の良さを見出して、大好きな仕事にしてしまうことです。
せっかく働くのであれば、仕事を単なる報酬を得るためだけの苦行ととらえてはもったいないでしょう。仕事が、楽しみながらお金がもらえる方法になれば、こんな素晴らしいことはありません。なんとかして、「大好きな仕事」につぎ込む時間を増やしてみませんか。