本来名詞にする必要がないのに、名詞化して不自然になることがあります。特に、接客の場面などでよく耳にします。
線路内人立ち入りの影響により、当列車は5分ほど遅れて運転しております。
通勤で電車を利用している人であれば、このようなアナウンスを聞いたことがあるのではないでしょうか。「人立ち入り」というのが不自然な名詞化です。これを修正すると「線路内に人が立ち入った影響により、当列車は5分ほど遅れて運転しております」となります。こちらの方が自然な文です。
鉄道関連では、「荷物挟まりの影響で」というアナウンスも聞きます。こちらも「荷物が挟まった影響で」の方が自然です。
コンビニでも不自然な名詞化が起こっています。「お弁当は温めますか」ではなく、「温めはどうなさいますか」といった聞き方をする店員もいます。以前「あっための方、どうしましょ?」と聞かれたときは、その意味を理解するのに少しタイムラグが生じました。
「気付きがあった」「気付きをもらった」というのも不自然な名詞化です。「気付いた」「気付かせてもらった」というのが自然な表現です。また、「気付くこと」というのは人に与えたりもらってりするものではありませんから、「気付きをもらった」というのはその点でも不自然です。
なぜこうした不自然な名詞化が起きるのでしょうか。文字数を減らすというのは理由にならなそうです。「気付きがあった」と名詞化するよりも、「気付いた」の方が文字数が少なくて済みます。他の名詞化の例を見ても、文字数の省略になっていないか、なっていてもほんの数文字の省略に過ぎません。
「名詞化すると、かしこまった印象になる」というのが、名詞化する理由ではないかと私は考えています。和語を漢語にすると、かしこまった印象になります。「信号が青に変わったのを見てから進んでください」よりも「信号が青に変化したのを目視してから発進してください」の方が、きちんとした文のように見えます。
それと同じような感覚で、「気付く」よりも「気付きを得る」、「人が立ち入る」よりも「人立ち入り」の方が、公の場で発信するのにふさわしいような気がするのではないでしょうか。