「拡散ください」という表現を見ることがあります。主に、SNSにおける書き言葉として使われます。「対象となる投稿について、SNS上でシェアすることによって広めてください」という意味です。
「拡散ください」という表現は、文法的に誤っています。元々「拡散する」という動詞があって、それを丁寧な命令形にすると「拡散してください」となります。「して」の部分は省略することはできません。
①修理する⇒修理してください⇒修理ください
②反省する⇒反省してください⇒反省ください
③謝罪する⇒謝罪してください⇒謝罪ください
①②③は、いずれも「~してください」の「して」を省略すると違和感を覚える人が多いでしょう。
④拡散する⇒拡散してください⇒拡散ください
⑤保管する⇒保管してください⇒保管ください
⑥実施する⇒実施してください⇒実施ください
一方、④⑤は「して」を省略した形もよく目にします。⑥については、「実施ください」はあまり見ないかもしれませんが「ご実施ください」はよく出てきます。「ご参加ください」も同様です。本来は文法的に誤りなのですが、多くの人が使っているし、それが多くの人に違和感なく受け入れられています。
ここまで見てきた「ください」は、いずれも補助動詞として機能しています。補助動詞は、それ単体では機能せず、別の動詞と組み合わせることで機能します。「拡散してください」で「して」を省略すると、補助動詞の「ください」は組み合わせる動詞がなくなってしまうので、文法的に機能しなくなってしまうのです。
「ください」は、補助動詞だけでなく単体で文法的に機能する本動詞として使われることもあります。「お金をください」「お代わりをください」などは、動詞として機能しています。この場合、「を」を省略した「お金ください」「お代わりください」は口語として許容されます。一方で、「拡散ください」の「ください」は本動詞ではありません。「”拡散”という概念を私によこせ」と言っているわけではないからです。