人は失敗への恐怖を抱いたときどのような行動に出るのでしょうか。失敗しないように努力するのでしょうか。実は、そのような状況下において人はセルフ・ハンディキャッピングという行動をするのです。
大事な試験や失敗できないプレゼンの前日に、ゲームに熱中したり部屋の大掃除を始めたりするのは典型的なセルフ・ハンディキャッピングです。こんなことをすれば、本番で失敗する可能性が高まります。しかし、失敗したときに自分の能力が足りなかったせいではないと思いこむことができます。わざわざ自ら失敗の可能性を高める行為をしておいて、失敗したときに自尊心を保つのです。
1970年代に、セルフ・ハンディキャッピングに関する実験が行われました。被験者である学生は、難しいテストを受けます。テストの結果にかかわらず、全員に結果は満点だったと伝えます。被験者はさらに次の試験に挑みます次のテストの前に、被験者は能力を落とす薬か、能力をアップさせる薬のいずれかを選んで服用します。過半数の被験者が、能力を落とす薬を選びました。
最初のテストの内容は難しいものだったので、ほとんどの被験者は手応えを感じていないはずです。ところが、「テストは満点でしたよ」と伝えられます。そんな状態で、被験者は次のテストに臨みます。テストが満点と伝えられて、自尊心はアップしていますが、それが自分の実力のおかげだったかどうかは確信が持てません。最初のテストが満点だっただけに、次のテストで成績ががた落ちになるのは避けたいところです。
そのような心理状態で、「能力を下げる薬と上げる薬、どちらを選びますか」と聞かれます。被験者には能力を下げる薬を選ぶ理由があります。次のテストで成績が良くなかったとしても、「能力を下げる薬を服用したせいだ」と言い訳ができます。自尊心を保つことができるのです。
ほとんどの人は、自宅に能力下げる薬を常備していません。そこで、薬の代わりに遅くまで飲んだりして能力を下げるというわけです。もし失敗しても、「前日遅くまで飲んでいたから仕方ない」と言い訳ができます。もし成功すれば、「前日飲んでたのにうまくいった」ということができます。
セルフ・ハンディキャッピングのメリットは、どう転んでも自尊心を保てることです。もちろん、自尊心を保つために、成功確率を下げてしまっているというデメリットから目を背けてはいけません。
ちなみに、複数の実験結果から、女性よりも男性の方がセルフ・ハンディキャッピングを利用する傾向が強いことがわかっています。男性の方が「強くなければならない」「有能でなければならない」というプレッシャーが強いのかもしれません。
大事な仕事を控えた前日に、飲みに行ったりゲームで遊んだりしたくなったら、「自分はセルフ・ハンディキャッピングをしたいだけではないか?」と自問してみるとよいでしょう。