プラシーボ効果とは、有効成分が含まれていない薬剤を服用して、症状の改善が見られることを意味します。2009年、ドイツで行われた実験では、被験者の腕にクリームが塗られました。被験者には「これは麻酔クリームです」といってはいるものの、実は麻酔効果のないただのクリームでした。
クリームを塗った後、腕に痛みを感じるレベルの熱を加えたところ、クリームを塗った周辺では痛みが小さかったと被験者は報告しました。被験者の脳を調べてみると、実際に痛み止めが使われたときと同様の反応が見られました。
2010年の研究では、過敏性腸症候群を改善する偽薬を患者に与えました。患者には、あらかじめ「これは有効成分が含まれない偽薬です」と伝えたうえで投与しました。患者は偽薬とわかって服用したのに、服用しなかった患者と比べて症状が約2倍改善したと報告しました。
プラシーボ効果は、医学だけではなく様々な分野で応用されています。ある実験で、被験者にはゴルフをしてもらいました。半分の被験者には普通にゴルフボールを渡し、残りの半分には「これは幸運のボールです」と言って渡しました。普通のボールも幸運のボールも、まったく同じゴルフボールです。どちらになるかはランダムで決められました。幸運のボールを渡された被験者は、パットの成功率が35%高くなりました。
スポーツをするときに腕や脚に巻くサポーターも、プラシーボ効果があるかもしれません。肘が曲がらなくなるくらいきついサポーターでは、競技ができなくなります。締め付けがゆるすぎればサポーターとしての意味がありません。サポーターはその中間で、ちょうどいいきつさで気になる箇所を覆います。しかし、それがどれくらい筋肉や関節の保護に役立つかは疑問です。それでもプレイヤーがサポーターを使うのは、適度な締め付けによって「これでより安全に競技ができる」という安心感を得て、パフォーマンスの向上につなげたいからでしょう。
病気の治療のために、医学的根拠に乏しい民間療法に頼ることが一概に無意味だとは言い切れません。そもそも、治療において本人の生命力、治癒力は必要不可欠です。信じている民間療法を続けることで、本人の治癒力が向上し、完治に向かうこともあり得ます。
ある人が幸運のブレスレットを身に着けてから、大成功を収めたという話を聞いて、ブレスレットに飛びつかないようにしましょう。それが本当の話であったとしても、大成功の原因がブレスレットであると断定はできないのです。