「人は見かけによらぬもの」ということばがありますが、実際のところ私たちは、人の見かけに大いに影響を受けています。
1975年におこなわれた実験で、犯罪者の容姿が魅力的であればあるほど、刑が軽くなるということが証明されました。実験でおこわれた模擬裁判において、被験者は陪審員として窃盗罪の被告人の報告書を読んだうえで判断を下します。被告人が有罪であるという前提で、禁固1年から15年の間で、適切な刑期を判断するのです。
被験者は3つのグループに分けられました。ひとつは、事件の報告書だけを読んで刑期を判断するグループです。他のグループは、事件の報告書の前に被告人の経歴書を読みます。経歴書には被告人の写真が添付されています。
実は被告人の写真は2種類ありました。非常に美人な女性の写真と、そうでない女性の写真です。いったん整理すると以下の通りです。
グループ1:被告人の事件の報告書だけを読んで刑期を判断する
グループ2:被告人の経歴書(美人の写真付)と報告書を読んで刑期を判断する
グループ3:被告人の経歴書(不美人の写真付)と報告書を読んで刑期を判断する
もちろん、美醜の判断にはおおいに主観が入り込む余地があります。ただし、この実験では、ほとんどの人が美人だと評価するであろう人物の写真と、そうではない写真が添付されていました。美人の判断基準による誤差がないように、美醜の差がはっきりわかる写真が用意されていたのです。
美人の写真付経歴書を見たグループは、平均して被告人の刑期を3年と判断しました。一方で、美人でない被告人の写真を見たグループは、平均して被告人の刑期を5年と判断しました。ちなみに、被告人の経歴書を見なかったグループ、つまり被告人の写真を見なかったグループは、平均して刑期を5年と判断しました。
この結果から、「見た目がいい人は得をする」ということができるでしょう。この実験で被験者が見た報告書は、全員共通です。また、経歴書を見たグループも、同じ内容の経歴書を見ています。違うのは被告人の写真だけです被告人の容姿が優れていると、すおでない被告人と比べて刑期が軽くなったということなのです。
ちなみに、この実験は現代の倫理基準では実行不可能かもしれませんね。ルッキズム撤廃というのが現代のトレンドですから、被告人の写真の容姿の違いで刑期に差がつくか検証するような実験など、批判が殺到して実行できなくなる可能性があります。
もちろん、容姿ではなくその人の本質で評価ができればそれに越したことはありません。しかし、今回紹介した実験の通り、容姿はその人の評価に強い影響を及ぼすのです。大切なのは、「私は容姿で判断なんてしない!その人の人間性を見て判断する!」と断言することではないでしょう。人は容姿を見て、まだ見えていないその人の中身まで判断してしまう傾向がある、ということを理解することでしょう。