エフェクチュエーションって何?

「エフェクチュエーション」とは、不確実性の高い状況における意思決定の一般理論です。ダイヤモンド社から発行されている『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』(吉田満梨・中村龍太 著)では、エフェクチュエーションの基本的な考え方がわかりやすい事例を交えて説明されています。

従来の経営学では、「コーゼーション(因果論)」が重視されてきました。コーゼーションに基づくと、不確実な取り組み(起業・新規事業の立ち上げなど)に際しては、事前に環境を分析し、最適な計画を立てることが重要とされています。

例えば、新市場に参入するときは、事前にその市場や競合等の環境を調査・分析します。分析結果をもとに、事業計画を立案し、計画のために必要なリソースを確保し、実行に移します。これはまさに私が以前勤務していた会社で実施されていたプロセスです。新市場や新製品にチャレンジするときは、どれだけ詳細な分析ができているかが重視されていました。この分析が甘いと、会議の場で徹底的に詰められます。

コーゼーションが有効なのは、目的が明確であり環境が分析に基づいて予測可能な場合に限られると、本書では書かれています。しかし、現時点で存在していない事業や市場を新たに創造する場合は、最初から明確な目的が見えないこともあります。また、具体的な調査・分析をやりようがないということもあるでしょう。また、やるべきことが見えていても、必要なリソースを確保できないことも想定されます。

上記のようなケースでは、エフェクチュエーションの方法論が役に立ちます。エフェクチュエーションには、大きく5つの考え方があります。今回は、そのうちのひとつ、「手中の鳥の原則」を紹介します。

「手中の鳥の原則」では、「手持ちのリソースで何ができるか」ということを考えます。身近な例で説明しましょう。自宅で料理をするとき、「今日はこれを作ろう」と決めたら、そのために必要な材料をリストアップして、スーパーなどに買いに行くでしょう。これはコーゼーションの方法論です。

一方で、特に何を作ろうと決めていないこともあるでしょう。冷蔵庫を開けて、入っているものを見て「これならアレが作れるな」と思って料理をする。あるいは、「あとはネギがあればアレが作れるな」と思って買い物に行く。これがエフェクチュエーションの方法論です。

これまでは、コーゼーションの方法論の方が重視されてきたのではないでしょうか。「手持ちのリソースで何ができるか考える」というエフェクチュエーションの方法論は、「志が低い」と思う人もいるでしょう。しかし、エフェクチュエーションのアプローチを使うと、当初は思いもよらなかった良い結果を得られることもあるのです。

世界初のレトルト食品「ボンカレー」は、手持ちのリソースを活用したことから生まれました。もともと大塚グループでは、点滴液を高温処理で殺菌する技術を持っていました。それを食品にも利用したのが「ボンカレー」だったのです。

「手中の鳥の原則」でいう手持ちのリソースは、ずっと固定されているものではありません。行動を起こすたびに更新されるものです。「誰を知っているか」というのも、リソースのひとつです。

あなたがなんとなく独立起業したいと考えているときに、以前知り合ったパーソナルジムの経営者を思い出します。その経営者と連絡を取って会うと、親切にもジム経営のノウハウを教えてくれました。これであなたの「何を知っているか」というリソースが更新されます。さらに、その経営者が開業するときに資金を貸してくれた信用金庫を紹介してもらいました。これであなたの「誰を知っているか」というリソースも更新されます。

このように行動を続けることで、リソースは更新されていきます。すると、そのリソースでできることも広がっていくというわけです。こうしたリソースの更新は、偶然に頼る部分も大きいですが、思わぬチャンス拡大につながる場合もあります。

コーゼーションとエフェクチュエーションは、どちらが優れているといったものではありません。あなたが取り組む課題の内容によって、うまく使い分けるとよいでしょう。

コメントを残す