「私はこんなに苦しんでいるのに、どうしてあいつはわかってくれないんだ」と思ったことがあるでしょうか。多くの場合、自分が期待しているほど相手はあなたのことを理解していないものです。
気が利かないとか、配慮が足りない人に対して「相手の立場になって考えてみよう」というアドバイスは果たして有効でしょうか。健康にもかかわらず、目の前に老人を立たせて優先席に座っている人が、目の前の老人の立場になって考えるようになれば、その老人に席を譲るのでしょうか。
このことについて検証する実験がおこなわれました。その結果、相手の立場になって考えるだけでは、他人の気持ちを理解する能力は向上しないことが示されました。
実験では被験者が複数の課題に取り組んだのですが、そのうちのいくつかを紹介します。例えば、ある課題について、被験者は正解を知っています。正解を知っている状態で、間違っていることを正しいと誤信している人の気持ちを推測します。
他の課題では、参加者同士で組んでボウリングなどの活動を行いました。活動を通じて、相手の立場になって、相手が好きな活動を予想するのです。また、きついジョークを言われたときの相手の反応を予想するという課題もありました。
これらの課題において、被験者は2つのグループに分けられました。ひとつのグループは、どんな方法を使って予想を立ててもよいと言われていました。もうひとつのグループは、相手の立場になって考えるようにと指示されました。
実験後、後者のグループは「課題を通じて、自分の視点だけでなく他者の視点で考えられるようになり、他者の気持ちの理解度が増したと思う」と語りました。しかし、あらゆる課題において、後者のグループの予想が正確だったという結果は得られませんでした。
いくら理解しようと努力したところで、所詮他人は他人ということでしょうか。