イースト・サイド・アクセスは、アメリカニューヨーク市の公共事業です。この事業は、クイーンズからマンハッタンのグランドセントラル駅に、ロングアイランド鉄道を乗り入れさせるものです。この事業は1969年に始まり、長い中断を経て2006年に再開。2023年に完成しました。総事業費は110億ドルと試算されています。1kmあたりの建設費は約40億ドルにものぼり、鉄道用のトンネル工事としては世界平均の7倍もかかりました。
参考までに、都営地下鉄大江戸線の数字を見てみると、総工費は約1兆3500億円。1kmあたりの建設費用は約600億円です。いつの時代のレートで考えるかで変動はありますが、1ドル100円とすると1kmあたり6億ドル、1ドル150円とすると1kmあたり4億ドルとなります。こうしてみると、イースト・サイド・アクセスの異常な高コストがわかるのではないでしょうか。
2017年、ニューヨークタイムズに掲載された「世界で最も単価の高い地下鉄」という記事において、高単価になった原因を分析しています。「労働組合・建築会社・コンサルティング会社が政治家と結託して、甘い汁を吸っている」と記事には書かれています。例えば、地下鉄工事に必要とされる相場の4倍の労働者を雇っていたそうです。
予算を承認する側が見る目をもっていれば、このような予算が通ることはなかったでしょう。労働者とその報酬の試算を見て、「なぜこんな大量の労働者が必要なのですか」と確認すればよかったのです。あるいは、すでに確認はしていた可能性もあります。しかし、予算を通したい側から「この工事は他とは違う特徴があり、標準以上の労働者を雇わないといけないのです」と主張されて、それを受け入れてしまったのかもしれません。
数年前、ワクチン接種会場でふと疑問に思ったことがありました。「こんなにスタッフが必要なのか?」ということです。会場入口にビブスを着たスタッフが立っていて「会場はこちらの2階です」と案内していました。入口では書類のチェックをするスタッフが数名立っていました。チェックを受けて、2階にのぼるまでの間に、いくつかのポイントにスタッフが立っていて「こちらへお進みください」と案内をしていました。書類の最終チェックをする受付窓口が複数あり、窓口のスタッフの他に空いている窓口に誘導する専門のスタッフもいました。
ここまでの間に、5名ほどのスタッフの誘導、声掛けを受けたのですが「もっと少ない人数で回せるんじゃないか」と思ってしまいました。「こちらへお進みください」と声を掛けているスタッフがいましたが、普通の人なら声掛けがなくても問題なく目的地へたどり着けるでしょう。人を配置せずに、張り紙・看板で十分だと思いました。これだけ潤沢に人を配置したということは、その分報酬も膨れ上がります。原資は当然税金です。
都庁のホームページで、ある臨時職員募集広告を見かけました。訴訟業務の補助をする事務職職員の募集でした。詳しく見てみると、コロナ関連の補助金・助成金を不正受給した事業者に返還を求める業務の補助ということでした。
もちろん、悪いのは制度を悪用して不正受給した事業者です。しかし、支給決定時に不正を見抜けず支給して、それを取り戻すためにチームを組む。そのために一定の職員のリソースが割かれます。弁護士等、単価が高い専門家も必要となります。さらに、臨時の職員も雇う。なんだか効率が悪いな、と思ってしまうのです。
国を問わず、こういったことはよくあるようです。