「お休みをいただく」は誰への敬意?

会社や役所に電話をして、担当者とつなぐように依頼したところ、担当者がその日は休みということがあります。このとき「〇〇は本日お休みをいただいております」という言い方をする人がいます。実はこれは正しい敬語表現ではありません。

敬語には、尊敬語・謙譲語・丁寧語といった種類があります。尊敬語は、話し手が相手や話題の主を立てる表現です。謙譲語は、話し手が自分や身内に対してへりくだることで、相手や話題の主を立てる表現です。

「いただく」というのは、「もらう」の謙譲表現です。

①先日は結構なものをいただきましてありがとうございました。

①には謙譲語として「いただく」が使われています。「結構なもの」をもらったのは、話し手、あるいはその身内です。「結構なもの」を渡したのは、話をしている相手です。受け取った立場である自分を下げることによって、渡した立場である相手を立てているということになります。

②社長からお褒めの言葉をいただきました。
(ある会社員が、自分の社長から褒められたことを後日談として語っている想定)

②には謙譲語として「いただく」が使われています。褒められたのは、話し手、あるいはその身内です。褒めたのは社長です。そして、話し手が話している相手は社長ではありません。②の場合は、その場にいない社長を立てている表現です。なお、話し手が話している相手は、社内の社長よりも地位が低い人であることが想定されます。社外の人に話す場合は、②の言い方は不適切です。たとえ社長であっても、身内はへりくだるというのが日本の敬語のルールです。社外の人に話す場合は、単に「社長に褒められました」というのが適切でしょう。

ここまでの前提を踏まえて、「〇〇は本日お休みをいただいております」という表現について考えてみましょう。休んでいるのは、話し手の身内である〇〇さんです。では〇〇さんに休みを与えているのは誰でしょうか。おそらく、〇〇さんの上司、あるいは人事部門のスタッフでしょう。

つまり、「〇〇は本日お休みをいただいております」という表現は、〇〇さんに休みを与えた社内の人を立てていることになります。電話をしている人を立てていることにはならない点に留意してください。

このような理由で、「〇〇は本日お休みをいただいております」という表現は正しい敬語の使い方ではないといえます。では、なんといえばよいのでしょうか。単に「〇〇は本日休みです」といえば十分です。ただ、それだけだとなんとなく不十分な気がする人が多いのでしょう。そこでもう少し丁寧な表現はないか、と苦慮した結果、「お休みをいただく」という言い方を編み出したのではないでしょうか。

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