子どもはいかにして嘘を学習するのか

一般的に、子どもは2歳半くらいから嘘をつくようになります。この時期の嘘は、現実と願望、空想の区別がついていないことによるものです。例えば「空を飛びたい」という願望が、「空を飛んだよ」という発言になってしまうのです。本人には嘘をついているという自覚はありません。「空飛んでないよね」と否定されると、「本当なのに」とムキになったり悲しんだりします。

この時期の子どもは、意図的に嘘をつくことができません。歯磨きが面倒で「もう歯を磨いたよ」と嘘をついたり、怒られたくなくて「ガラスを割ったのはぼくじゃないよ」と嘘をついたりはしないのです。

小さな子どもが嘘をつかないのは、純真無垢だからではありません。「自分は真実を知っていても、他人はそれを知らないかもしれない」ということを理解していないからです。それは実験でも確認されています。

ある研究で、3歳の子どもに簡単なゲームを教えました。2つあるカップを逆さまにして、どちらかにキャンディーを入れます。どちらのカップに入っているか当てることができれば、キャンディーをもらえます。

次に、子どもにキャンディーを隠させて、研究者がどちらのカップにキャンディーが入っているか当てるようにしました。研究者が間違えると、子どもはキャンディーをもらえるというルールです。子どもがどちらかのカップにキャンディーを入れた後、研究者は「キャンディーはどこにあるの?」と子どもに質問しました。

子どもたちは決まってキャンディーが入っているカップの方を指さしました。どちらのカップにキャンディーが入っているかは、子どもだけが知っていて、研究者は知らないはずです。しかしそのことを子どもたちは理解できません。自分がどちらのカップにキャンディーを入れたのか、研究者も知っていると思いこんでいるので、嘘をつくという発想に至らないのです。

この研究で嘘がつけなかった子どもたちに、10日程度かけてあるトレーニングを受けさせました。トレーニングの一部を紹介します。研究者は子どもにペンケースを見せて「何が入っていると思う?」と質問します。子どもが「鉛筆」と答えると、研究者はペンケースを開いてリボンなど別のものが入っていることを示します。その後「ペンケースの中を見てない人は、リボンが入っていると思うかな?」といった質問を投げかけます。

このトレーニングを通じて子どもたちは、「自分が知っていることでも、他人は知らない場合があり得る」ということを学びます。

トレーニング終了後、子どもたちに再びキャンディー当てゲームをさせてみました。すると、子どもたちはほぼ毎回研究者を騙してキャンディーを獲得するようになりました。子どもたちは、「自分はAのカップにキャンディーを入れた。でも相手はそのことを知らない。Bにキャンディーがあると言えば、相手はBを選ぶ。するとキャンディーがゲットできる!」ということを学習したのです。

このようなトレーニングをしなくても、3歳を過ぎる頃には子どもたちは自然に嘘をつくことを学習します。嘘をつくには、他人の心を理解する必要があるのです。

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