「見るとやるとでは大違い」という言葉は、様々な場面で当てはまります。スポーツ中継で選手がミスする場面を見ると「なんであんなしょうもないミスをするかなー」と思うでしょう。しかし実際に自分がやってみると、まずまともにプレイができないでしょう。
また、人は実際に持ち合わせている以上の知識を持っていると錯覚しがちです。特に、普段から慣れ親しんでいることに対してその傾向が強まります。
多くの人が独立して商売を始めるとき、飲食業を選びます。飲食店は開店から1年で3割、3年で7割、10年で9割が廃業すると言われています。飲食業は「初期投資の費用が高い」「原料の廃棄率が高い」「売上が季節や天候に左右されやすい」など、商売として厳しい条件が多く、成功するのが難しいのです。
それでも飲食業を選ぶ人が多いのは、普段から慣れ親しんでいるからです。ほとんどの人は大人になるまでに何度も飲食店で食事をしています。また、飲食店でアルバイトをした経験がある人もたくさんいます。テレビやネットでも、飲食店特集をよくやっています。このように普段から飲食店の情報に触れていると「自分でもできそう」と錯覚してしまうのです。
こうした錯覚を防ぐためには、自分の知識を書き出してみることが有効です。「ラーメンが好きでよく食べに行ってるから、自分で開業してもうまくいくだろう」となんとなく思っている人がいるとします。しかし、実際に開店までこぎつけるまでに何をすればいいか具体的に書き出してみると、すぐに手が止まってしまうでしょう。
ある実験で、被験者にヘリコプターなどが動く仕組みについて自分がどれくらいの知識を持っているか、自己評価させました。7段階評価で、1が「まったく知らない」、7が「完全に知っている」という内容です。あなたなら、ヘリコプターに関する知識について、何点くらいをつけるでしょうか。
ヘリコプターに乗ったことがある人は少ないでしょうが、ほとんどの人は動いている映像は何度も見ているでしょう。被験者の自己評価の平均は、4点前後になりました。だいたい真ん中くらいの評価です。
その後被験者には、ヘリコプターが動く仕組みを具体的に書き出してもらいました。多くの被験者が、非常にあやふやな内容しか書くことができませんでした。その後、改めてヘリコプターの知識について自己評価させると、最初の評価よりも点が下がりました。具体的に書き出してみたことで、実際にはヘリコプターについてあまりよくわかっていないということが自覚できたのです。
「やったことはないけど多分できるだろう」と思っていることがあれば、実際の手順を具体的に書いてみましょう。「意外と書けないな」と自覚することになるでしょう。その自覚が重要です。本当はよくわかっていないことを自覚すれば、わかるようになるための行動を起こせるのです。