SNSで不用意な発言をして、大炎上するケースが後を絶ちません。慌てて「そういうつもりで言ったのではない」と釈明しても後の祭りです。特にテキストだけのメッセージだと、発信するときの表情や声などの情報がないため、自分が意図したとおりに伝わらないリスクが高くなります。
では、対面のコミュニケーション、それも気心が知れた相手であれば、意図が誤解されることなく伝わるのでしょうか。2011年に複数の社会心理学者らによって、曖昧なメッセージが正確に伝わるか確かめるための実験がおこなわれました。
ふたりで映画を観に行った帰りに「どうだった?」と聞かれたとします。相手は「とても面白かったよね」という気持ちで聞いていることもあれば、「期待外れだったね」という気持ちで聞いていることもあります。こうした言外のメッセージは正確に伝わるものでしょうか。
「何か忘れてない?」と相手から聞かれたとき、相手は純粋に忘れているものはないか確認しているとは限りません。あなたがやるべきことをやっていないことに気付いてほしくて、そのような発言をしている可能性もあります。
実験において、参加者は2人一組になって、こうした曖昧なメッセージをいくつか受け取ります。ペアのうち一人は渡されたメッセージを、特定の意図をもってもう一人に伝えます。例えば「今日はよく晴れてるね」というメッセージを「晴れてるから一緒に出掛けようよ」という意図で伝える、といったように。聞き手は相手の発言を受けて、どういう意図で言っているのか4つの選択肢から選びます。
参加者のペアは「初対面同士のペア」と、「親しい友人や夫婦のペア」のいずれかでした。当然、友人・夫婦のペアの方が、相手の意図を正確に汲み取れる割合が強いと思うでしょう。しかし結果として、初対面のペアと友人・夫婦のペアでメッセージの理解度にほとんど差はありませんでした。聞き手が話し手の意図を正確に理解できた割合は、平均で50%未満だったのです。
「長年の付き合いだから何も言わなくてもわかりあえる」というのは幻想だったということです。実際には、ずっと連れ添った夫婦であっても、初対面のときと同じ程度でしか言外のメッセージを理解できなかったのです。
この実験結果から、「言わなくてもわかっているだろう」という考えは危険だといえます。もし旅行に行きたいのであれば「最後に旅行に行ったのっていつだっけ」と聞くのではなく、「久しぶりに旅行に行こうよ」とはっきり言った方がいいということになります。ちょっと風情はなくなるかもしれませんが。