ビジネスの世界では先行者利益が大きいと言われています。特にネットが絡むとその傾向が強くなります。例えば、日本で一番普及しているチャトアプリはLINEです。今からLINEより便利なチャットアプリをリリースしても、シェアを獲得するのは難しいでしょう。
あるサービスの利用者が増えるほど、利用者全体の利益や利便性が向上する性質のことを、ネットワーク外部性といいます。電話やチャットアプリはネットワーク外部性が働くサービスです。利用者が10人しかいないチャットアプリは、多数の人とつながるのに不便ですから普及しません。日本におけるLINEくらい利用者が多ければ、つながりたい相手にいちいち「LINEはやってますか」と聞く必要もなく、「LINE教えて」といえばつながれます。
フリマアプリもネットワーク外部性が働きます。利用者が増えれば増えるほど、出品商品が増えて自分が欲しいものが見つかる可能性が高くなります。出品者にとっても、購入者が現れる可能性が高くなります。
株式会社メルカリは2013年2月、山田進太郎ら3名によって共同設立された企業です(正確には2013年11月に株式会社コウゾウから社名変更)。メルカリは国内における月間利用者数が2023年時点で2200万人を超え、国内フリマアプリ市場では圧倒的なシェアを誇ります。
メルカリはフリマアプリ市場において先行者ではありませんでした。アプリリリース時点で、フリル他約10社の競合がひしめき合っていたのです。山田はリリース前に、すでにリリースされていた他のフリマアプリを調査しました。モニターを呼んで各アプリを操作してもらい、どこがわかりにくいか、どこにストレスを感じるかなどを聞き取りました。その結果を、メルカリに反映させてリリースしたのです。
ただし、完璧を求めすぎてリリースが遅れると、その分本来なら獲得できたユーザーを逃す恐れがあります。そこで、最初は必要最低限の機能のみ搭載してリリースしました。最初のバージョンは検索機能や振込申請機能すらありませんでした。
予定より2か月遅れて2013年7月2日に、フリマアプリ、メルカリはリリースされました。初日のダウンロード数は60。2024年12月時点では6000万ダウンロードを突破しているメルカリですが、初日は100万分の1しかダウンロードされなかったのですね。
リリース以降、メルカリはマーケティングに力を入れていきます。オンラインを中心に複数の広告をうちました。ユーザーが何を経由してダウンロードしたかを逐一分析して、効果が薄い広告はすぐに取りやめにしていました。割と当たり前の手法ですが、そういったことを地道に継続していた結果、リリースから約3週間後には5万人のユーザーを獲得することができたのでした。
2014年5月には全国でテレビCMを流しました。テレビCMといえば、なるべく多くの人に向けたものというイメージです。しかし、当時の経営陣の狙いは20~30代の女性です。そこで若年層をターゲットにした内容、キャスティングでCMを製作しました。
CMの効果は大きく、開始前のダウンロード数は200万程度だったものが、1年後には約1000万まで急増しました。CMを流した時期もよかったようです。CM開始時点では、特に若年層においては「まわりにメルカリをなんとなく使っている人がいる」といった状態でした。そのタイミングでCMをうつことによって、「じゃあ私もダウンロードしてみよう」となったと考えられます。
このように、ユーザー目線でサービスを作り、適切なマーケティングをすることで、後発でもトップシェアを取ることが可能なのです。