人の記憶は簡単に書き換えられる

このブログでも何回か話題にしていますが、人の記憶というのは非常に当てにならないものです。動画撮影であれば、カメラの前の事実をありのままに記録することができます。しかし、人間の記憶は動画撮影とは異なります。

ある大学の講義中、後方の席に座っていた男が前方に座っていた女子学生のかばんを盗って逃走します。ほんの数秒の出来事で、かばんを盗られた女子学生も、周りにいた学生たちも身動き一つ取れませんでした。

これは人間の記憶に関する検証のために、エリザベス・ロフタス教授が仕込んだ実験でした。ロフタスは教室にいた学生たちに、犯人の容姿について質問しました。学生たちは口々に犯人の着ていた服や髪型、年齢、顔つきなどについて話しました。

途中である学生が「背が高くて短髪、ひげがあったと思う。あとメガネをかけていたかな」と語りました。それを聞いて別の学生が「そう言われるとひげがあった気がする」と同調しました。学生たちの意見が出そろったところで、ロフタスは3人の容疑者を教室に入らせました。全員似たような恰好で、ひげを生やしていました。被害者の女子学生や、他の学生が「何番が犯人だと思う」と意見を述べました。そこで4人目の男性が教室に入ってきました。4人目はひげを生やしていませんでした。

女子学生は4人目を見て「彼が犯人です!」と叫びました。真犯人にはひげなどなかったというわけです。途中で「犯人はひげを生やしていた」と証言した学生は、実はロフタスに依頼を受けていたサクラでした。

サクラの「犯人にはひげがあった」という発言を受けて、サクラではない別の学生も「確かに」と同調しました。それをきっかけに、学生たちの間に「犯人はひげを生やしていた」という認識が作られていきました。一番近くて犯人を見ていたはずの女子学生ですら、ニセの記憶を植え付けられたのです。

もしひげのない真犯人が登場しなかったらどうなっていたでしょうか。ひげを生やした3人の容疑者のうち誰かが犯人の濡れ衣を着せられていたでしょう。これが人の記憶の恐ろしいところです。我々の記憶は、このようにいとも簡単に操作されてしまうのです。

コメントを残す