振り込め詐欺の研修システム2

以前、振り込め詐欺の研修システムについて記事で紹介しました。今回は、「老人喰い」(鈴木大介著)より、別の振り込め詐欺現場の研修システムを紹介します。

その現場は都心から電車で40分ほど離れた場所にある雑居ビル。「電話営業 月給30万円」という求人を見てやってきた20名ほどが研修に臨みます。研修参加者は、手元にある顧客リストに対して投資用マンションの営業電話をかけます。

営業トークに関してはスクリプトが定められています。もしスクリプト通りに最後まで進めば、顧客の住所を聞き取って資料を送る約束をして電話を終了します。とはいえ、最後まで進むケースはほとんどありません。また、仮に最後まで進んで住所を聞き取ったとしても、実際に資料を送ることはありません。

それでは何のために電話をかけるのでしょうか。この後実際の詐欺電話を任せられる適性があるかどうか見極めるためです。この研修中に適性がないと判断されれば、この先に進むことはありません。それは本人にとっては幸運なのかもしれません。

電話かけは午前9時から始まります。ほとんどは不通、もしくは相手が出たとしてもガチャ切りです。電話が終わったらすぐに次の番号にかけないと、怒声が飛んできます。12時までかけ続けて、45分の昼休憩後は午後1時~4時と4時30分~6時に電話かけです。電話で資料請求までこぎつけたら、その場で5000円の報酬が出ます。実際には資料を送らないのにボーナスが出るのです。

研修を続けていくと、メンバーは次々と抜けていました。厳しい環境の中でひたすら電話かけ、そして資料請求までいっても最終的には送らない。こんな状況では続けられないと考える方が普通でしょう。研修10日目には5名だけが残りました。

そしてこの5名に運営側は「我々がやろうとしているのは振り込め詐欺だ」と明かします。10日間研修についてきた参加者は、うすうす「研修後の仕事は普通の仕事ではないのだろう」と感じていました。それでも、振り込め詐欺をやると言われれば動揺します。運営側は「我々は強制しない。無理だと思ったら辞退しても構わない」と言います。ここで辞退しなかった者が、振り込め詐欺の「かけ子」として詐欺の一味になるのです。

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