会社の金に手を付けた人たちの結末

私がかつて勤めていた会社では、約10年の間に10人以上が会社の金に手を付ける横領をおこない、会社を去ることになりました。そのうち一部は私も関わっています。もちろん、横領する側ではなく、横領の疑いがある社員に聞き取りを行ったり、横領を認めた後の対応をしたりしていました。今回はそのときの経験をお話します。

会社のお金の動きに不振な点があると、経理部門から該当の事業部に連絡がいきます。その後、事業部の責任者に同行してヒアリングに参加することがありました。聞くことはひとつです。「本来あるべきお金と、現実にあるお金が一致しないのですがその原因は何ですか」ということです。

最初のうちは「なぜ一致しないのか私もわからない」などととぼけるものです。しかし同じ質問を、言い方を変えて何度も聞き続けると相手は根負けして横領を認めます。だいたい1時間くらいはかかります。4時間くらい粘る相手もいました。

横領は懲戒解雇するには十分な理由となります。しかし横領を認めた相手にはこのような話をしていました。「本来なら懲戒解雇のうえ横領で刑事告訴となるところですが、自主的に退職願を書いて、いついつまでに横領したお金全額を返済するという念書をこの場で書くのであれば、あなたの将来のことも考えて自主退職扱いにします」

こう持ち掛けると、ほぼ100%が念書を書きます。懲戒解雇になると、次の転職先が大きく制限される可能性が高まります。まして刑事告訴となると、人生プランが大きく変わってしまうでしょう。誰しも、懲戒解雇や告訴を免れられるものなら免れたいでしょう。

一方、この取引は会社側にもメリットがあります。横領が事実であれば、懲戒解雇の理由としては十分です。しかしもし相手が後になって「懲戒解雇は不当だった」と訴えてきたらやっかいです。最終的に会社側の主張が認められるとしても、その過程で多大なリソースが割かれます。会社の評判が下がるリスクもあります。

刑事告訴しても会社側に経済的なメリットはありません。横領額が見逃すことができないような莫大な金額であったり、その社員をどうしても罰したいという場合は別ですが、会社としては刑事告訴には消極的な場合が多いと思います。

社員が横領した金は、当然社員が全額返済する義務があります。しかし、日本の法律では自力救済は原則禁止されています。社員がのらりくらりと支払いを遅らせた場合、裁判の手続きによらなければ口座を差し押さえるなどの措置もとれません。

「期日までに全額返済しなければ、懲戒解雇ならびに告訴される」となれば、相手も本気で返済しようとするでしょう。懲戒解雇するというのは、相手に確実に支払わせるための人質を解放してしまうようなものです。

このようにして会社を去った人たちについて、ときどき「今頃どうしてるかなー」と考えることがあります。ネットで検索してみると、同じ業界の別会社で働いたりしています。懲戒解雇になっていたら、それもできなかったかもしれません。

コメントを残す