クイズの職業で見えてくる無意識の偏見

以前に「職場のコミュニケーションについて」という研修を受けたことがあります。そこでこういうクイズが出されました。

父親と息子が遊園地に出かけて観覧車に乗っていると、突然観覧車が止まってしまった。消防のはしご車が救助にやってきた。消防士が父と息子の乗るゴンドラに乗り込んだとき、その消防士は驚いて言った。「ああっ!私の息子です!」
この3人の関係についてどのような解釈が可能だろうか。

このクイズの目的は、無意識の偏見を顕在化することです。私たちは「現場で活動する消防士」と聞いて、無意識のうちに消防士は男性であると考えがちです。クイズに出てくる消防士が女性であり、息子の母親であるというのが考えられる解釈のひとつです。

消防士を男性と仮定すると「息子の実父は離婚し、母親は再婚した。どちらかが実父でどちらかが再婚後の父親である」という解釈が成り立ちます。

消防士はゴンドラの中にいる父親と息子を見て「ああっ!私の息子です!」と言ったとあります。「私の息子」というのが「ゴンドラの中にいる息子」と決めつけるのも、無意識の偏見といえるでしょう。消防士の息子は、「ゴンドラの中にいる父親」である可能性もあります。つまり、ゴンドラの中の息子にとって消防士は祖父または祖母であるという解釈も成り立ちます。祖父/祖母も父親も若いときに子どもをもうけたとすると、あり得なくはない話です。

私はこのクイズの設定違いをいくつか見たことがあります。子どもの頃に見たのは、医者の設定です。父親と息子が事故で病院に運び込まれて、手術を担当する医者が「ああっ!私の息子です!」と言うものです。

今から約50年前、全医師に占める女性の割合は10%以下でした。年々女性医師の割合は増え続け、現在では20%を超えているそうです。また、女性医師が活躍する映画やドラマも数多く公開されています。そのため、現在では昔ほど「医師といったら男性」という偏見も少なくなっているのではないでしょうか。今の時代に医師バージョンのクイズを出したら、「医師は息子の母親だったんでしょ?」と答える人も昔より多いはずです。

弁護士バージョンというのも見たことがあります。「離婚裁判で必ず妻側が多額の慰謝料を勝ち取らせる弁護士がいた。あるとき弁護士自身の離婚裁判があり、自分で手続きを進めた結果、妻側が多額の慰謝料を勝ち取った。しかしこの弁護士は慰謝料を1円も支払っていないという。どういうことだろうか」というものです。

考えうる合理的な答えは「弁護士は女性であり、妻側、つまり自分が多額の慰謝料を勝ち取ったのだから慰謝料を1円も払う必要がなかった」というものです。こちらも、女性弁護士の割合が増えていることや、女性弁護士が活躍するテレビやドラマの影響で、現在ではすんなり答えにたどり着ける人が増えているのではないでしょうか。

一方で、女性消防士は昔よりは増えているとはいえ、昨年時点で3%台とまだまだ少数派です。そういった背景もあって、クイズに出てくる職業が消防士になったのかもしれません。

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