フリーライダーへの対処方法

社会集団や組織から得られる便益だけを享受しておいて、相応の費用を払わなかったり、決まり事を守らなかったりする人のことを「フリーライダー」と呼びます。

私が学生の頃生活していた大学の寮は、学生の自治によって運営されていました。学生たちは自分の部屋によっていくつかにグループ分けされ、グループごとに交代で共用施設の掃除をしていました。

あるグループが掃除をさぼったとします。本来1時間かかるところを、15分くらいで切り上げたと仮定しましょう。その程度のさぼりであれば、次の掃除担当のグループも気付かない可能性があります。「今回は割と散らかってるな」と思いつつ、きれいに掃除するかもしれません。

この場合、掃除をさぼったグループは「交代で掃除をする」という義務を果たさずに、清掃の行き届いた寮生活を享受しており、典型的なフリーライダーであるといます。野菜の無人販売所でお金を払わず野菜を持ち帰る人。みんなでバーベキューに来て、まったく準備の手伝いをしない人。会議で一切発言をしない人。税金を払わずに公共財を利用する人。これらはみなフリーライダーの例です。

ニューカッスル大学でおこなわれた実験によると「人が見ているかもしれない」と思わせるだけで、フリーライダーの行動を抑制できることがわかっています。

実験では、無人のコーヒー販売所の集金箱に2パターンの細工が施されました。ひとつは集金箱に花の写真が貼ってあるパターン。もうひとつは実物大の人間の目の写真が貼ってあるパターンです。目の写真のパターンでは、花の写真のパターンと比較してコーヒー代を払う割合が3倍になりました。

参加者が10人の会議で、「自分が発言しなくてもいいだろう」と考えて何も意見を言わない人がひとりだけであれば、会議は予定通り進んでその目的は達せられるかもしれません。しかしそのようなフリーライダーが大半を占めるようになると、会議は一部の発言者の意見だけで進んでしまい、多様な意見を集められません。

質が悪いことに、会議で何も意見を言わなかった人に限って、「あの会議の結論には納得できない」と後になってグチグチ言い出します。「ではなぜ会議の場で言わなかったのか?」という話になります。

フリーライダーは放っておくと増殖する性質があります。100人いる組織で、仕事をさぼるフリーライダーがひとりだけであれば、他のメンバーでカバーできるかもしれません。しかし、真面目に仕事をしているメンバーの中には「あいつだけ楽してずるい」と考える人も出てくるでしょう。

さらに「あいつがさぼっても回るんだからもうひとりさぼっても大丈夫だろう」と考えて、フリーライダーに転身するメンバーも出てくるでしょう。フリーライダーが増えてくると、真面目に仕事をしているメンバーの負担は増えていきます。負担が増えれば、真面目に仕事をするのが馬鹿らしくなってフリーライダーに転身する動機も強くなります。

心理学者のロビン・ダンバーらのシミュレーションによると、あるコミュニティにフリーライダーが侵入したとき、10世代後には40%がフリーライダーになり、20世代後には全員がフリーライダーになるという結果が出ています。

全員がフリーライダーになると、どのようなコミュニティでも機能しなくなります。バーべーキューに来たのに全員が準備に参加せず、全員が「早く誰か準備しろよ」と考えているような状況です。

何もしなければ、フリーライダーはウイルス感染のように増殖していきます。しかし対策を取ることによって、フリーライダーの割合を低く抑え続けることは可能です。

先ほどのダンバーらの研究で、フリーライダーを管理する仕組みを導入した場合、10世代、20世代、30世代と世代を重ねても、フリーライダーは非常に低い割合でしか存在できないことがわかっています。

ポイントは、フリーライダーがごく少数のときに対処することです。「99%の人はちゃんとやってくれているから」といってフリーライダーを放置していると、どんどん増殖して手遅れになります。

具体的な対応方法としては「義務を果たすように注意する」「コミュニティから追い出す」といった方法が考えられます。コミュニティの性質や規模に応じて、適切な対応を取るのがよいでしょう。

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