今回は肯定表現と否定表現についての話です。人間は肯定表現と否定表現、どちらの表現であってもまず直観的に肯定的なイメージで物事を考えます。
例えば「このボタンを押してはいけない」と言われるとまず直観的に肯定的なイメージ、つまりボタンを押すことをイメージします。その後で「~してはいけない」という禁止のメッセージを受け取って「押しちゃいけないんだな」と理解するのです。
「Aするな」と相手に言ったとき、相手はまずAすることをイメージしてしまいます。その結果、やってほしくない行動をとってしまうリスクが生じます。このリスクを避けるために、否定表現を肯定表現で言い換える方法があります。
「鍵を開けっぱなしにしないでね」ではなく「鍵を閉めてね」
「明日は資料を忘れないでね」ではなく「明日は資料を持ってきてね」
「うそをつくな」ではなく「本当のことを言って」
このように、否定表現ではなく肯定表現を使うことで意図した行動へ誘導しやすくなります。
特に大勢の人に指示するときは、肯定表現を使った方が理解されやいでしょう。そしてメッセージの内容をシンプルにすることも大事です。
例えばイベント会場で大人数の観客の退場を誘導するとき、AとB、二つの出口があって、出口Aは封鎖されていて全員出口Bから退場してもらう必要があるとします。
このとき「出口Aは封鎖されているので使わないでください。出口Bから退場してください」と指示すると、観客は出口Aから退場することをイメージしてしまいます。その結果、「出口Aは使わないでください」と言っているにもかかわらず、出口Aに向かう人が一定数出てしまうでしょう。
代わりに「出口はBのみです。皆さん出口Bから退場してください」と言ってみましょう。そうすると出口Aの情報が出てこないので、出口Aに向かう人も少なくなるはずです。
企業などのポリシーなどを箇条書きにするときも肯定表現を使った方がいいでしょう。例えばある飲食店が接客で大事なことを箇条書きにして従業員に浸透させたいというときにこういう4箇条を作ったとします。
①明るく笑顔で接客する
②気遣いや配慮を忘れない
③丁寧な言葉遣いで対応する
④お客様を待たせない
ここでは①と③が肯定表現、②と④が否定表現ということで肯定と否定が混在しています。人は否定表現であっても直観的に肯定的なイメージをもつという習性がありますから、④お客様を待たせない、というメッセージを読んだときにまずお客様を待たせることをイメージしてしまいます。
そこで②は「気遣いや配慮を心がける」、④は「迅速に対応する」といった肯定表現に変えた方が、従業員に正しくメッセージが伝わると思います。