アーティストであり作家でもあるロッド・ジャドキンスは、ドバイのテレビ局に依頼されて局のドラマ制作チームに創造性養成セミナーを開くことになりました。
ジャドキンスは十分な準備をしてドバイに飛びましたが、顔合わせの直前、局長に突然「セミナーはやらなくていいから、テレビドラマの企画開発を手伝ってください」と言われます。ジャドキンスはセミナーに向けて綿密な準備をしてきましたが、まったく不要になってしまったのです。
局は今までにないドラマを放送したいのに、出てくる企画が凡庸なものばかりでした。新しい風を吹き込むためにジャドキンスが招かれたのです。
撮影担当、音響担当、政策担当、衣装担当など、テレビ局には様々な部門があります。そしてスタッフは自分が担当している部門のプロであると自負していました。その結果、組織全体がセクショナリズムに陥って創造性が損なわれていることにジャドキンスは気付きます。
そこでジャドキンスは、全員の立場を入れ替えるという大胆な作戦を思いつきました。撮影担当者に脚本のアイデアを出すように依頼し、衣装担当者に登場人物を考案するように依頼しました。このようにして、各スタッフに専門外の仕事を任せることにしたのです。
多くのスタッフは反発しましたが、ジャドキンスはなんとか説得をして新たな役割に取り組んでもらいました。全スタッフが新たな役割に関しては初心者であるという利点を生かして、枠組みにとらわれないアイデアが次々と出てきました。
やがて完成したドラマが放送されました。これまでの既成概念にとらわれない斬新な番組となりました。
ひとつの分野について専門性を高めると、これまでのやり方に固執してしまうというデメリットがあります。そして自分より経験が浅い人の提案を「誰に向かって言ってるんだ。俺に意見するなんて百年早い!」といって切り捨ててしまいます。
マンネリを避けるために、常に新たな手法を試すことは効果的です。しかし、それを自主的に行うことは難しい。ジャドキンスがやったように、強制的に役割を交換するのも、新しい視点を取り入れるためには有効かもしれません。