A&Wはアメリカに本社を置くファーストフードレストランチェーンです。アメリカの他にインドネシア、オーストラリアなど16の国と地域に1200店舗以上を出店しています(2021年時点での情報)。日本では沖縄に1店舗だけ出店しています。
1980年代、A&Wは「サードパウンダーバーガー」という新製品をリリースしました。これは当時マクドナルドで販売されていたクオーターパウンダーバーガーに対抗するために販売された商品です。マクドナルドのクオーターパウンダーバーガーは、調理前のパテの重量が4分の1ポンド(約113g)ありました。A&Wのサードパウンダーバーガーは、クオーターパウンダーバーガーと同じ値段で、3分の1ポンド(約151g)のパテを使っていることが売りでした。
A&Wはこの新商品を、テレビやラジオで大々的に宣伝しました。しかしまったく売れませんでした。なぜ失敗したのかわからなかったA&Wは、リサーチ会社に原因の分析を依頼しました。その結果、多くの消費者が「なぜクオーターパウンダーと同じ値段をサードパウンダーに払わないといけないんだ?」と思っていたことがわかりました。
ここで問題です。3分の1と4分の1、どちらが大きいでしょうか。当然3分の1です。しかし多くの消費者はそれが理解できていなかったようです。3分の1と4分の1で、分母の数字だけを見て「4分の1の方がお得じゃないか」と思ったのです。
ほとんどの人は、広告を目を凝らして見ることはありません。適当に流し見しています。流れてくる広告のうちせいぜい1割、あるいはもっと低い割合で、興味を惹かれたものだけじっくり見てみるのです。広告を見ているときには、3分の1と4分の1の大小を比較するくらいの作業ですら億劫になってしまうようです。
それから30年以上経過した2021年、A&Wはサードパウンダーバーガーの商品名を変更すると発表しました。新しい商品名は「スリーナインスパウンダーバーガー」です。スリーナインスとは9分の3です。約分して3分の1です。かつての教訓を生かして見かけの数字を大きくしたんですね。