細かいカットで興味をつなぎとめる

動画の世界では1カットの時間がどんどん短くなっています。ここでいうカットとは、映像の最小単位を意味します。例えば、2人が会話している場面が以下のような一連の流れで描写されているとします。

(1) 会話している2人(AとB)が画面に収まっている
(2) Aが話をしていてAだけが画面に映っている
(3) Aの話を受けたBが話をしていてBだけが画面に映っている
(4) 再び会話している2人が画面に収まっている

この場面は4カットで構成されています。仮に画面の切り替えがなく、ずっと2人が会話している場面を同じ方向から収めた映像が流れ続けたとしたら、その場面は1カットということになります。

1930年代、映画の1カットは平均12秒でした。その後年を追うごとに短くなり、2010年以降は平均4秒弱になりました。テレビ番組の場合は、50年代の1カットは平均13秒でしたが、2010年には4秒弱となりました。テレビCMの場合、70年代の1カットは平均3.8秒でしたが90年代には2.3秒まで短縮されました。

テレビCM全体の長さも短くなっています。50年代、テレビCMの長さは60秒が主流でしたが、2017年には60秒CMの割合は5%まで激減しました。その後は30秒のCMが主流となり、さらに15秒のCMが主流になってきました。YouTubeなどのネットメディアではさらに短く、6秒のCMも多く流れています。

これらの現象の原因として「視聴者が長い時間集中できなくなってきた」ということと「制作側が視聴者を飽きさせないで興味をつなぎとめたい」ということが考えられます。どちらが先でどちらが後なのか判断するのは難しいことです。

いずれにせよ、現代人は1カットが長い動画にはすぐ飽きてしまうでしょう。3分の演説シーンであれば、1カットで3分間演説者を映し続けるような作品はあり得ないでしょう。遠くから移した演説者、演説者のアップ、演説者の手元、聴衆全体、一部の聴衆のアップ、袖にいる関係者、会場全体などを細かく切り替えながら見せていかないと、視聴者はすぐに離脱してしまいます。

頻繁にカットが切り替わる動画を見ていると、人は認知リソースを消耗します。認知リソースというのは、脳を使うためのエネルギーのようなものです。難しいタスクに集中して取り組んだり、ストレスがかかったりすると認知リソースは減っていきます。カットが切り替わるたびに、私たちは新しいカットの内容やカメラの視点などを理解しなければなりません。それは認知リソースを消費する行為なのです。

ある実験では、カットの切り替え頻度が異なる2種類の動画を見た後、画面に数字が表示されればボタンを押し、文字が表示されれば押さないという課題が与えられました。切り替えの速い動画を見た後では、文字が現れても間違ってボタンを押してしまう傾向が見られました。

私の親は私が子どもの頃「テレビばっかり見てたらアホになるよ!」と注意喚起をしていました。これはある意味で真実だったのかもしれません。正確には「頻繁にカットが切り替わるテレビばっかり見てたら、認知リソースが消費されて脳のパフォーマンスが落ちるよ!」ということになります。それを子どもにもわかるように端的な表現で伝えていたのではないでしょうか。

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