ある実験で、98人の被験者が実験室に集められてそれぞれひとりのパートナーと3つのタスクに取り組みました。3つのタスクによって、被験者の協力(パートナーにどれだけ協力的か)、説得(パートナーの説得にどれだけ応じるか)、自己欺瞞(パートナーからの質問にどれだけ正直に誠実に答えるか)を測ることができます。
タスクは対面ではなく、オンラインでおこなわれました。98人の被験者のパートナーは、すべて同じ人物(実験者側の人間)でした。パートナーの行動や話す内容は、どの被験者に対しても同じものでした。ただしひとつだけ被験者によって異なる条件がありました。
被験者の半数は、パートナーが同じ地域(南カリフォルニアの町)に住んでいると伝えられました。残りの半数は、南カリフォルニアから遠く離れたボストンに住んでいると伝えられました。
パートナーが遠くに住んでいると伝えられたグループは、明らかに協力度が低く、パートナーからの説得に応じにくく、パートナーからの質問に誠実に回答しませんでした。すべての被験者にとってパートナーは、その日初めてオンラインで出会い、おそらくその後は一生会うことがない人物です。そんな相手ですら、相手が近くにいるかどうかで態度が大きく異なってしまうのです。
人は意識して、あるいは無意識のうちに他人を「内側の人間」と「外側の人間」に仕分けします。内側の人間にはある程度気を許して、気さくなコミュニケーションをとることができます。一方で外側の人間に対しては常に一定の距離を置き、自分のプライベートや本音は極力晒さないようにします。
実験の日にオンラインで初めて出会う人物は「外側の人間」として認識されるでしょう。ところが、自分と同じ町に住んでいるという情報を聞いただけでも、ある程度距離が縮まるようです。
YouTubeには有名無名問わずたくさんの人が、些細な日常の記録動画を発信しています。好きな有名人や自分の知人の動画であれば見るかもしれませんが、よほど目を惹くアピールポイントがなければ知らない人の日常を流す動画などクリックはしないでしょう。
では、その知らない人とあなたの間に共通点があることがわかったらどうでしょう。例えば、住んでいる町、出身地、出身校、好きなマンガ、好きな曲などがあなたと同じだとしたら。少しは興味が湧いてきませんか?
よく知らない他人との意外な共通点を知ったとき、その人はどんどん「内側の人間」に近付いていくのです。