意思決定をするにあたって、情報収集は重要です。情報収集が不十分な状態で意思決定をしてしまうと、誤った決断をするリスクが高まります。とはいえ、情報はあればあるほどいいというものではありません。世の中には無数の情報が溢れています。どんな些細な情報でも漏れなく集めようとすると、終わりがなくなってしまいます。
情報量と意思決定の精度に関して興味深い実験データがあります。心理学者のポール・スロビックは8人の競馬予想屋を集めて40本のレースの予想をしてもらいました。予想屋は最初のレース前に出走馬に関して希望するデータを5つ提供されます。
5つの情報を入手した予想屋に、自分の予測にどれだけ自信をもっているか聞いてみました。5個の情報を提供された予想屋の自信は19%で、実際の的中率は17%でした。今回のレースで素人が適当に予想した場合の的中率は、約12%程度ですから、それよりは高い的中率ということになります。
レースが進むたびに、予想屋は追加の情報を与えられます。最終的には40個の情報が提供されました。40個の情報を与えられた予想屋の自信は34%まで上昇しました。しかし実際の的中率は、情報が5個与えられたときと同じ17%でした。
今回の実験では、情報が増えれば増えるほど自信は高まっていくが、実際の精度は比例して上がるとは限らないということが示唆されています。
特に重要な意思決定にあたっては、慎重に検討したいという気持ちが働きます。「まだ把握できていない大事な情報があるんじゃないか」と思って、情報収集のやめ時がわからなくなる場合もあるかもしれません。
やめ時の一例として「新たに上がってくる情報が既知の情報と似通ったものばかりになる」ということがあります。この状態になると、実験で出てきた競馬予想屋と同様に「これ以上情報を集めても自信は高まるが精度は変わらない」ということがいえます。
もちろん、情報収集を継続することによって新たな有益情報を入手できる可能性もあります。一方で、世の中の情勢は刻一刻と変わっています。情報収集のために決断を遅らせたために、それまでに集めた情報が陳腐化したり、ライバルに先を越されるリスクもあります。
このようなリスクも認識したうえで、情報収集に区切りをつけて次のステップに進むべきでしょう。