「この映画は『刺さる』作品だ」といったらどういう意味だと思いますか。『校閲記者も迷う日本語表現』によると
・胸が痛むつらい作品・・・・・・・・・・4.3%
・共感、感動できる作品・・・・・・・・・52.1%
・文脈による・・・・・・・・・・・・・・30.6%
・「刺さる」をこのように使わない・・・・13.1%
「共感、感動できる」という意味だとする人が過半数を占めました。ただ「刺さる」という言葉の元々の意味だけを考えれば、「共感できる」という解釈が当然だとは言い切れないでしょう。
goo辞書で「刺さる」を検索すると最初に「1.先のとがったものが他の物に突き立つ」と書かれていました。「トゲが刺さる」とか「釘が刺さる」というのは映像的にもイメージしやすいと思います。
そこから転じて「2.強い衝撃を受ける、また深い感銘を与える」という意味が広がっていきました。体感では2010年代くらいから徐々に2の用法が広まっていったような気がします。
「部長のことばが刺さった」というとき、ある程度上の世代だと「部長のことばに傷ついた」というように解釈する人がいるかもしれません。20代~30代くらいの若い世代であれば「部長のことばに感銘を受けた」と解釈する人が多いのではないでしょうか。
2024年現在では「刺さる」ということばが「感銘を受けた」という解釈になるのが当然とまでは言い切れないと考えられます。したがって、新聞や書籍で単に「先輩のことばが刺さった」という原稿が出された場合、校閲としては文脈にそって適切な言い換えを勧めるべきでしょう。