坊主憎けりゃ袈裟まで憎い

心理学者のソーンダイクはアメリカ空軍に協力して、兵士の能力を評価するツールを制作しました。その後実際の評価結果を集めて分析した結果、ある傾向を発見しました。人が人を評価するとき、すべての評価項目が相関関係をもつという傾向です。

評価にあたって、評価者である軍幹部は「各項目は他の項目と切り離して考えるように」と伝えられていました。しかし実際には、ある項目の評価がその他の評価に大きく影響を及ぼしていたのです。

例えば兵士の忍耐力や忠誠心が高評価だったとき、決断力や管理能力など他の項目も高評価になりました。逆に特定の項目が低評価だったときは、その他の項目も連動して低評価になりました。全般的に、各項目の評価はその隣の項目の評価と高い相関性がありました。特に影響力が高かったのが「航空機の操縦能力」という項目です。この項目の評価が、それ以外の項目の評価に強い影響を及ぼしていました。

確かに空軍兵士にとって、航空機の操縦能力は重要な要素でしょう。しかし操縦がうまいことと、部下を管理する能力があることは直接関係がありません。それでも操縦能力が高いと評価された兵士は、他の直接関係ない項目についても高評価を得て、将来の幹部候補生とみなされる傾向が強かったのです。

元々人間は、出会ったものに対して「自分にとって好ましいものかどうか」を瞬時に判断したがります。太古の昔、草むらからガサゴソと音が聞こえたら「捕食者か獲物かそれ以外か」を瞬時に判断しなければなりませんでした。様々な角度から複数の情報を集めてしてじっくり検討していたら、その間に食われてしまうかもしれません。したがって、すぐに入手できる情報をもとに、一瞬で判断して行動に移す必要があったのです。

現代の人間にもこのときの習性が残っています。最初の方に入手した情報や、特定の種類の情報だけで全体の評価を決定するという習性です。

今から約20年前の研究によると、身長が約183cmから約2.5cm高くなることに、年収が平均789ドル高くなるといいます。また歴代の大統領選挙では、約80%の割合で背の低い候補が負けています。本来、身長と稼ぐ能力やリーダーシップは無関係のはずなのです。ところが実際には高身長の人は、身長以外の要素も優れているに違いないと他人から評価されます。そしてその評価を受けて、平均より多く稼いだり、高い地位に上ったりできるのでしょう。

1975年におこなわれた実験によると、犯罪者の容姿が魅力的であるほど刑が軽くなることがわかります。模擬裁判で被験者は被告人の経歴書を読みます。そこには非常に美しい女性と、そうでもない女性の写真が添付されています。その後、被験者は被告人の窃盗に関する報告書を読み、禁固1年から15年の間でどれくらいの刑が適当か判断します。美人の刑期は平均3年、そうでもない人の刑期は平均5年という結果でした。なお、写真なしで判断した場合は平均5年でした。つまり、美人だと刑期が4割ほど軽くなるのです。

「人を見た目やその他特定の要素だけで差別してはいけない」というのは当然の話です。それに反対する人はいないでしょう。しかし現実には、無意識のうちに見た目やその他特定の要素によって、実力以上に下駄を履かせてもらったり、不当に低い評価を受けたりするのです。

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