台所で鍋が燃えているとき、最優先で消火すべきは火元の鍋です。火元を放置して延焼している他の場所を消火しても、火事は収まりません。生活や仕事においても同様のことがいえます。目の前の問題を処理することにかかりきりになって問題が発生する根本的な原因を放置していたら、似たような問題が発生し続けるでしょう。
あなたはあるアパレル店で店長を務めています。最近、店の経営状態が思わしくありません。売上は前年同月比マイナスが続いています。どうにかして改善しないと、減給・降格・閉店といった未来が待っています。
以下のような対策が考えられます。
・セールをうつ
・ネット、紙等の媒体で広告を出す
・商品ラインナップを変更する
・客が呼べるようなイベントをおこなう
これらは対処療法です。セールや広告によって一時的に売上は上向くかもしれませんが、終わればまた落ち込むでしょう。経営状態が思わしくない根本的な原因を突き止めて、それを潰さない限り継続的な解決はできません。
よくある根本的な原因としては
・競合店に顧客を奪われている
・商品ラインナップが顧客にとって魅力的ではない
・接客の質がよくない
・店舗周辺の環境が変わった
といったことが考えられます。通常は原因がひとつだけであることはなく、複数の原因が複合的に絡み合っています。主要な原因を見極めて、原因ごとに適切な対応をする必要があります。例えば魅力的な商品がないということが主要な原因だとしたら、現状の商品ラインナップのままキャンペーンを打ったところで効果は限定的です。
多くの組織では根本的な原因解決よりも目先の問題への対処にリソースが割かれています。その理由のひとつが「目先の問題に対処していると、周囲には仕事をしているように見える」ということです。
「売上対策として今度の週末に30%オフセールを打つことにしました。セールのポップ作り、WEBでの告知、DM作成などそれぞれ抜かりなく進めています」と店長会議で言っておけば、いったんはエリアマネージャーからの追及も緩むでしょう。さらに「別途手作りのチラシをスタッフと一緒にポスティングします」と宣言すれば「自らの足を使って何とかしようと頑張っているな」と評価してもらえるに違いありません。
こうやって動き回っていれば、周囲には仕事をしているアピールになるし、自分自身も「やれることはやっている」という安心感を得ることができます。しかし前述したように、それが根本的な原因の解決につながるかどうかは未知数です。
根本的な原因解決のための動きは、遠回りしているように見えてしまいます。原因特定のために他店を視察したり、接客について顧客からアンケートをとったりしてもすぐに売上が向上するわけではありません。「そんなことしてる時間があったら外に出てチラシの一枚でも配ってこい」と言われるかもしれません。しかし根本的な原因を特定して潰した方が、長期的には組織にとってプラスになるのです。
根本的な治療と対処療法、そのどちらも並行して実施できればいいのですが、ほとんどの場合、それをやるには人的にも時間的にもリソースが足りないでしょう。そこで一時的にでも目に見える成果のために、また努力しているというアリバイ作りのために、多くの組織において対処療法の方が選ばれるのです。