100ドルの予想が2万8千ドルまで膨れ上がった理由

NASAは1972年に再利用可能なスペースシャトルは建造可能だと主張しました。その際、荷重1ポンドあたりのコストは100ドル以下に抑えられると試算していました。では、実際のコストはどうなったでしょうか。1ポンドあたりの平均コストは約2万8千ドルに達しました。

「予想よりコストがかかっちゃいました」では済まされないレベルの乖離です。その辺を歩いている人に予想をしてもらっても、もう少しましな数字が出てくるのではないでしょうか。一体なぜこんな結果になってしまったのでしょうか。

大規模で複雑な計画の予算見積もりでは、往々にしてこのようなことが発生します。特に、その計画を実現したいという大きな力が働いていて、かつ事実上予算上限が決まっている場合はそうなりやすいのです。

あなたが役員を務める会社で、ワンマン社長が突然新市場に進出すると言い出したとします。社長の発言力は非常に強く、言い出したら役員陣が説得しても聞く耳を持ちません。社長はあなたに予算の上限10億円で、新市場進出のプランを考えるように命じました。

プランを考えてみてあなたは途方に暮れます。新市場に進出するには、どうしても30億円はかかります。しかし、この会社が新市場に30億円を投資するのは不可能だということを知っています。「試算した結果、10億円ではとても収まりません。新市場進出は諦めましょう」とあなたは言えるでしょうか。

このような状況に陥ったとき、多くの人が予算の上限である10億円で収まる試算を提出します。この際、価格がわかっているものの数字を操作すると試算がデタラメであることがバレてしまいます。例えば、試算に単価100万円の製品を単価50万円と書いてしまうのはあからさま過ぎるでしょう。

試算を操作するときは、不確定なもののコストを過少に評価する手法がよく用いられます。単価100万円の製品が100個必要になると予想したとき、試算には50個と記載しておくような方法です。後で「50個で十分と判断したのですが、不測の事態があったため100個必要になりました」と説明するというわけです。

スペースシャトル計画において、NASAはこのプロジェクトを何としても実現したいと思っていました。そこで、議会の予算上限を超えないようにコスト予想を調整したのです。

スペースシャトル計画では、後になってコストがどんどん膨らんでいきました。利害関係者全員の考えを反映させようとしたことが原因です。

プロジェクトにはNASA以外にも多くの利害関係者が参加していました。彼らは自分たちの要望を、全体のバランスなど考えずに遠慮なく伝えます。そうした意見や要望をまとめて、調整をするのがプロジェクトマネージャーの仕事です。調整にあたっては当然反発も出てくるでしょう。しかし、反発を食らわない方法があります。出てきた要望をすべて受け入れることです。

大規模なプロジェクトでは利害関係者からの反発がつきものですが、スペースシャトルのプロジェクトではそういったゴタゴタがありませんでした。利害関係者からの要望がすべて受け入れられたためです。そうすると、当然コストはどんどん膨らんでいきます。

このような経緯で、スペースシャトル計画のコストは当初の試算から200倍以上になってしまいました。スペースシャトルほどの規模ではないにせよ、どこの世界でも起こりうる話ですね。

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