期待値だけで生き延びる

90年代末期、アメリカを中心にインターネット関連企業に大きな期待が集まりました。この時期に数多くのIT関連ベンチャーが起業され、1999年から2000年にかけてその株価は異常に上昇し続けました。これをドットコムバブルと呼びます。

サイバーエージェントは2000年にマザーズ市場に上場しました。そのときの売上は4.5億円です。売上が4.5億円しかない企業が「これからはIT企業の時代だ」という期待感だけで上場出来てしまった時代だったのです。しかし、そうした企業の多くがたいした利益を生み出せていないことがばれてしまうと、蜘蛛の子を散らすように投資家たちは手を引きました。

配車サービスやウーバーイーツで有名なウーバーテクノロジーズは、売上を伸ばし続けているものの、2022年12月期決算まで黒字化を達成できていません。それでもウーバーは投資家から得られる豊富な資金をつぎ込みながら、潰れることなく事業を拡大し続けています。

そもそもウーバーが設定している料金体系で安定的に稼ぐことは難しいでしょう。黒字化のためには、料金の値上げやドライバーの報酬の引き下げが必要だと考えられますが、経営陣はいずれもやるつもりはないようです。

かつてドットコムバブルで勃興した無数のITベンチャーと同様に、ウーバーは「なんかすごそう。期待できる」という雰囲気だけで市場から資金を集めています。

私が以前勤めていた企業も、似たところがありました。仮にX社としましょう。X社はITの導入が進んでいないある業界にITサービスを提供する事業で注目を集めました。社長はプレゼンが抜群にうまく、スタートアップ企業のピッチコンテストでは何度も賞を受賞しています。その事業の有望性や、社長が語るビジョンに魅せられて、多額の資金が集まりました。また、ピカピカの経歴をもつエリートが入社してきました。

しかし、肝心の稼ぐ力が足りませんでした。個人に例えていうと「月給20万円しかないのに毎月の支出は40万円。『いずれ年収1億になる』というものの、その具体的な方法はまったく見えない」といった状態です。入社して最初の週の会議で「このままだとあと9か月程度で資金が尽きる」という話を聞いたときは「とんでもないところに入っちゃったな」と思ったものです。

しかしX社は9か月で潰れることはなく、現在も存続しています。先に述べたように、社長の天才的なプレゼン能力によって何億、何十億と資金を引っ張ってきたからです。とはいえ、その資金のほとんどはいずれは返済が必要となる借入金です。

当時は、収入の2倍支出があるような企業によく何億も資金提供するものだと思っていました。おそらく投資した側も引けない事情があったと考えられます。スタートアップ企業に投資する側は、投資された企業が上場したときの株の売却益で投資額を回収します。億単位の投資額が、うまくいけば何倍、何十倍になって返ってくるような世界です。月収20万円で月に40万円使うような人間であっても「この人なんかすごそう。近い将来大成するかも」と思ってもらえれば、大金を出してもらえるのです。

2024年1月時点でX社は存続していますが、株式上場は果たしていません。私が入社した時点では「2018年に上場する」と言っていたような気がしますが・・・

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