弱いつながりが創造性につながる

人と人とのネットワークは「強いつながり」と「弱いつながり」の2種類に区別できます。強いつながりは、頻繁に会ったり連絡を取り合ったりする仲で、弱いつながりは滅多に交流しない知り合い程度の仲です。

ハーバードビジネススクールのリー・フレミングらは、つながりの強さと創造性の関係を調査しました。複数人と共同で特許を取得した3万を超える発明家のデータを収集しました。特許を取得したチームに関して、強いつながり(過去に共同で特許を取得したことがある)と、弱いつながり(初めて共同で特許を取得した集団)に分けました。特許の内容を精査した結果、弱いつながりのチームの方が特許の数が多く、また創造席も高いことがわかりました。

気心の知れたメンバーがそろっている、強いつながりのチームの方が創造性が高まりそうな気がしますが、実際には逆の結果が出ました。強いつながりの集団とは、一般的には家族・友人・仲のいい同僚などが該当します。こういった集団は弱いつながりの集団と比べると、多様性の面では劣ります。弱いつながりのチームでは、メンバーの個性のばらつきが大きくなります。それによって多様な意見が集まりやすくなり、創造性が高まるのでしょう。

以上の内容を踏まえると、創造性を発揮したいプロジェクトを立ち上げるとき、どのような基準でメンバーを選べばよいかが見えてきます。もちろん、そのプロジェクトに関連する領域に詳しいメンバーは必要でしょう。しかし、そういったメンバーばかりで固めてしまうと、アイデアの幅が狭まってしまいます。

プロジェクト関連の分野とはまったく畑違いのバックグラウンドをもつ人物もメンバーに加えるべきです。また、社内プロジェクトであれば、社外のメンバーも入れた方がいいでしょう。意識的に、チームの多様性を確保できるようにメンバーを選びましょう。

2016年、イングランドサッカー協会で技術諮問委員会が立ち上げられました。この委員会は、協会のCEOとイングランド代表監督に助言を行うために設立されました。以下のようなメンバーが集められました。

マノジ・バーデル(インド系イギリス人のIT起業家)
スー・キャンベル(競技団体に資金援助を行う政府系機関「UKスポーツ」の元会長)
サー・マイケル・バーバー(教育専門家)
スチュアート・ランカスター(元ラグビーイングランド代表ヘッドコーチ)
マシュー・サイード(元英国トップの卓球選手の作家・ジャーナリスト)

などなど、非常にバラエティに富んだメンバーでした。サッカーのイングランド代表チームは、当時長い期間にわたって国際舞台でいい結果を出せていませんでした。その原因のひとつとして、PK戦の弱さが指摘されていました。ワールドカップでは1990年、1998年、2006年にPK戦で敗れています。欧州選手権でも、1996年、2004年、2012年にPK戦で敗退しています。

そこで設立されたのが技術諮問委員会です。メンバーのうちサッカー関係者は、元イングランド代表のグレアム・ル・ソーだけです。それ以外は、サッカーとは直接関係がないバックグラウンドをもつ人たちでした。この人選に関しては「部外者に何ができる?」という批判が相次ぎました。IT起業家のバーデルは、組織に革新をもたらす方法を提案しました。教育専門家のバーバーは、抽象的なアイデアを具現化する方法についてアドバイスしました。

代表選手や代表監督として高い実績を誇るメンバーだけで固めた場合、互いの考えで共通する部分が大きくなるでしょう。あるメンバーが知っていることは、他のメンバーも知っているし、あるメンバーが知らないことは他のメンバーも知らない可能性が高いのです。このような環境で協議を行うと「あーやっぱりそうだよね」と互いの意見に同調し合って、新規性のある革新的なアイデアは生まれにくいでしょう。

異なるバックグラウンドをもつ弱いつながりのメンバーを集めると、創造的な成果を生みやすいという話をしてきました。ただし、弱いつながりのメンバーの場合、特に最初は互いに遠慮しがちになります。会議の運営者は、最初に緊張をほぐすアイスブレイクを設けたり、会食などを通じてお互いを知る機会を設けて、全員が忌憚のない意見を出せるようにする必要があるでしょう。

しかし、この委員会ではサッカー関係者ばかり集めた集団では決して出なかったであろうアイデアがたくさん出てきました。ラグビー出身のランカスターは、自身のラグビーワールドカップでの経験をもとに、大きな試合に向けた選手の選抜方法を提案しました。

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