銭湯の軒数は年々減っています。2000年、都内には1273軒の銭湯がありました。2010年には801軒、2020年には499軒と、20年で半分以下になってしまいました。
かつて銭湯は、地域住民にとって保健衛生上必須の施設でした。しかし、内風呂の普及に伴い、その役割は終えたといってもいいでしょう。現状、内風呂の普及率は95%を超えています。お金を払わなくても、自宅で風呂に入れる人がほとんどですから、利用者数が減るのは必然です。利用者数が減れば、潰れる銭湯も出てきます。
私が風呂なしアパートに住んでいた時代に通っていた銭湯は、浴槽1つに洗い場というシンプルな作りでした。ピークの時間帯でも洗い場が半分埋まるかどうかといった程度で、ピークを外すと客は数人とか自分一人だけということも珍しくありませんでした。その銭湯は今はなくなって、マンションが建っています。
これからは、そういったシンプルな造りの銭湯は続けていけないでしょうね。今後銭湯が生き残るには、例えば、ジェットバス・サウナ・水風呂といったプラスアルファの機能をつける必要があるでしょう。また、脱衣所から独立したラウンジのような場所を用意して、これから風呂に入る客や風呂上がりの客がリラックスできるようにすることも重要です。
そういった設備があれば、自宅に風呂があっても銭湯に行きたいという人が増えるでしょう。実際、今生き残っている銭湯は、上に挙げたような設備が整っているところが多いです。
東京都国立市にある鳩の湯は、高濃度炭酸泉・ジェットバス・サウナ・備え付けのシャンプーとボディソープ・外気浴エリアなど、設備が充実しています。店の前には「利用客の状況によって入場制限をする場合があります」という掲示があります。入場制限をしなければならないほど、客がたくさん入る場合があるということです。
銭湯業界全体は間違いなく縮小市場ですが、個別の店舗を見れば、鳩の湯のように繁盛することが可能です。そのためには、一定の設備投資は必須といえるでしょう。充実した設備の銭湯には、多くの客が集まり、そうでない銭湯には客が来ずに潰れてしまう。潰れた客の一部は、生き残っている充実した設備の銭湯に流れる。そういったサイクルが生まれて、今後は、スーパー銭湯並みのサービスが受けられる一部の銭湯だけが残ることになるでしょう。
縮小している業界で、巨大化して生き残るというのは書店業界でも見られます。2003年、国内に書店は20,880軒ありましたが、2022年には11,495軒とだいたい半減してしまいました。本を読む人が減ったことや、オンライン書店の発達などが原因と考えられます。
ここで、書店の売り場面積に注目してみます。2003年には300坪以上の書店は587軒あり、書店総数の約3%程度でした。2022年になると、1,101軒と2倍近くに増えます。書店総数に対しては約10%を占めています。
確かに、近年新たにできた書店は、どこもある程度の広さがありました。さらに、カフェが併設してあって購入前の本を読めるといった特色ある書店も多いです。
単に本を買うという目的を満たすのであれば、オンライン書店で事足りてしまいます。リアル書店がオンライン書店に勝つためには、来店しないと得られない体験を提供する必要があります。「本屋に遊びに行こう」と思ってもらえるような店作りをしないと、書店が生き残ることは難しいでしょう。
「昔ながらの個人書店が減って寂しい」という人もいますが、これは抗えない必然の流れと言えるのではないでしょうか。