人間はどこまで寒さに耐えられるのか

今年は暖冬と言われていますが、寒がりの私にとっては十分寒いと感じます。しかし、極端に寒い環境下で撮影された動画を見るのは好きで「ー71℃!世界で最も寒い都市ヤクーツク」みたいな動画を、暖かい部屋で「寒そう~」と思いながら観ています。

そういった動画を観ながら「人はどれくらいまで寒さに耐えられるか」という疑問を抱いて、調べてみました。今日はフランセス・アッシュクロフトの著書『人間はどこまで耐えられるのか?』に書いてあった内容をもとに記事を書いてみます。

まず、人が裸の状態では外気温が26℃より下がると寒さを感じます。体には寒さに対する防御反応があるため、風がない状態であれば外気温が0℃になっても、薄手の服だけで体の中枢温度を維持できます。気温が氷点下まで下がったり、風や雨に晒されるといった状況下では、中枢温度の維持が難しくなります。体内から大量の熱が奪われて、低体温症になる危険が出てきます。

風が吹くと寒さが増すことは、多くの人が経験により知っているでしょう。ー29℃でも、防寒服を着込んで風がない状態であれば、ほぼ危険はありません。しかし、時速15km程度の風が吹いている場合、体感温度はー44℃まで下がります。肌の表面は数分で凍りついてしまいます。時速40km程度の強風下では、体感温度はー66℃になり、体の肉は1分ももたずに凍り始めます。

ヤクーツクでは、外出時にうっかり手袋を忘れたりすると、手の指を失うリスクに晒されます。体が非常に冷やされると、体からこれ以上熱を放出しないように、外側の組織が凍ります。手足や鼻、耳などは、容積に対する表面積の割合が大きいため、多くの熱が放出されます。そこで、それらの部位を凍らせて体から熱が逃げないようにします。エベレストなどの高山にチャレンジする登山家が、凍傷で指を失うことが多いはそういった理由からなのです。

あまりに気温が低いと、肺がダメージを受けます。通常は、冷たい空気を吸っても、気管を通っている間に温められます。しかし、極端に冷たく乾燥した空気を吸い込むと、気管内の細胞が破壊されます。

1936年にエベレストを上っていたサマベルは、冷気で気管の細胞を破壊されて窒息死しそうになりました。そのときのことをサマベルは「喉の中で何かがはがれて突き刺さり、息を吐くことも吸うこともできなくなった。ありったけの力を込めて両手で胸を強く押すと、喉につかえていたものが口から出た」と述懐しています。

医学的には、体内の中枢温度が35℃を下回ると「低体温症」とされます。中枢温度が35℃以下になると、体が激しく震えだします。体の動きにも支障が出ます。思考にも影響が出て、合理的な判断ができなくなります。

中枢温度が32℃より下がると、体の震えは止まります。体内のエネルギーを使い果たすため、震えることすらできなくなるのです。そうなると、体温の低下に拍車がかかります。30℃くらいまで下がると、意識を失います。

水の中では、外にいるときよりもはるかに急激に体温が奪われます。15℃の水に裸で飛び込んだら、数時間も持ちません。0℃近い水に落ちたら、15分で低体温症になり、1時間程度で死に至るでしょう。

乗っている船が難破して、水中に放り出された場合、最善の選択は救命胴衣を着けて動かず救助を待つことです。泳いで5分以内くらいに岸が近い場合は、泳ぐという選択肢もありますが、それ以上遠い場合はやめておいた方がいいでしょう。泳ぐことによって、体から放出される熱が増えて、助からないリスクが増えてしまいます。

水中でじっとしていれば、体の周りに体温で温められた薄い層ができます。ないよりはマシという程度ですが、この層が生存時間を延ばしてくれます。むやみに泳いでしまうと、この層を逃がしてしまうのです。

こういった知識が役立つときが来ないのが何よりだということは言うまでもありません。

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