前回に引き続き、トレーニングや体作りに関する誤解について書きます。先日、電車でこんな会話を耳にしました。「ボディビルダーって大会に出るときは一回太るんだってね。滅茶苦茶食べて太る。そこから脂肪を筋肉に変えていくんだよね」
聞いていた相手は「へー」と感心していました。しかし、この人が言っていることは間違いです。脂肪と筋肉はまったくの別物であり、体に蓄えられた脂肪が直接筋肉に変わることはありません。最近、トレーニングに関する知識が広まってきましたが、このような誤った形で覚えられてしまうこともあるようです。
摂取カロリーをA、消費カロリーをBとします。A>Bの場合は、余ったエネルギーが脂肪や筋肉などになって体に蓄積されます。A<Bの場合は、体は脂肪や筋肉などを分解して、足りないエネルギーを補います。細かい点は無視して、ざっくり説明するとこんな感じです。
ボディビルダーには、絶対的な筋肉量が必要とされます。一定以上の筋肉をつけるために、摂取カロリーが消費カロリーより多い状態を継続します。この期間を「増量期」と呼びます。このとき、筋肉と同時に脂肪も増えます。筋肉だけ増えればよいのですが、人間の体の構造上、そういうわけにはいかないのです。増量期が終わると、筋肉のうえに脂肪が乗っている状態になります。
ある程度筋肉量が増えたら、摂取カロリーよりも消費カロリーの方が多い状況を継続します。これを「減量期」と呼びます。減量期は、脂肪と同時に筋肉も落ちます。筋肉の減少割合を少なくして、なるべく脂肪だけが落ちるように、食事内容を調整したり、トレーニングで筋肉に刺激を与えたりします。
要するに、ボディビルダーは増量期に筋肉と脂肪をたくさんつけて、減量期になるべく筋肉を落とさないように工夫しつつ、脂肪を落としていくのです。その結果、大会では筋肉のカットが綺麗に見える体型に仕上げるというわけです。
筋トレ系youtuberの動画を見ると、増量期はかなりプヨプヨした感じだったものが、減量期を経て大会直前になると、絞り切ったキレキレの体になっていたります。ああいった映像を見ると、まるで「脂肪が筋肉に変わった」ように見えるかもしれません。しかし、実際には筋肉と脂肪をたくさんつけた後で、脂肪を多めに落として筋肉のカットが見えるようにしているんですね。
このような体型コントロールは、誰にでもできるものではありません。科学的根拠に基づいたトレーニングと食事、それを継続する精神力、一定以上の素質がないとうまくいかないのです。上辺だけマネしても、増量期に脂肪をつけ過ぎて、減量期に筋肉を落とし過ぎて、むしろ見栄えが悪くなる結果になります。かつて私もそんな感じでした。
そこまでやり切る自信がない人は、増量期とか減量期とか考えず、適度な運動と適度な食事を継続すればよいでしょう。